2040年度の地方の基礎的財政黒字(対名目GDP比)の
政府試算値

国債費を除く歳出と歳入のバランスを表す基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、経済成長率や長期金利と同様に、政府債務の持続可能性を左右する重要な要素である。
内閣府が7月末に公表した「中長期の経済財政に関する試算」では、国と地方を合わせた基礎的財政収支の将来見通しが示された。
成長戦略が実現するケースでは、中長期的に黒字を維持する一方、現状の低成長が続くケースでは2030年代後半に赤字に転じると想定されている。
内訳を見ると、国の収支は、社会保障費の増加などを背景に赤字で推移するのに対し、地方の収支は対名目GDP(国内総生産)比で1.2~1.9%の黒字が続くと試算されている。国の赤字を地方の黒字が補う構図となっているのだ。
もっとも、政府試算の想定通りに地方財政が安定した黒字を維持できるとは限らない。
人口減少により過疎化が進む地域では、住民に必要な行政サービスを効率的に提供することが難しくなり、行政コストは上昇する。さらに、高度経済成長期以降に整備された道路、橋梁、下水道などの社会インフラでは老朽化が進み、その更新や維持管理に必要な支出の増加が見込まれる。
政府の将来試算は、賃金・物価上昇に伴う人件費や諸経費の増加を見込むものの、人口減少に伴う行政コストの上昇やインフラの更新需要の増加を十分に織り込めていない可能性がある。地方交付税などによる財政調整を踏まえてもなお歳出圧力が強まれば、地方財政は政府の想定に反して悪化する。
高市政権は、「国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下」という財政運営の目標と整合的ならば、一時的な基礎的財政収支の悪化を容認する姿勢を示している。中長期の財政収支の見通しが楽観的であれば、債務残高対GDP比は安定的に低下する姿となりやすく、足元の財政運営が過度に拡張的になる恐れがある。
政府は、行政コストの上昇やインフラの更新需要などを織り込んだ現実的な財政収支の見通しを作成するとともに、それを前提として、地方における持続可能な行政サービスの在り方を検討する必要がある。
(日本総合研究所 調査部 副主任研究員 村瀬拓人)







