2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
問題は外からわからない
部下思いで、話もよく聞く。理不尽に怒鳴ることもない。困っていれば助けてくれる。
そんな「いい上司」のもとから、部下が辞めていくことがあります。
周囲からすると、少し不思議です。
「もっとひどい上司なんていくらでもいるのに」
「人間関係は悪くなさそうだったのに」
「何が不満だったんだろう」
でも、「上司がいい人かどうか」と「その職場で働き続けやすいかどうか」は、分けて考えたほうがいいことがあります。
いい人かどうかよりも組み合わせが合っているかどうか
なぜなら、どんなに人柄がよくても、仕事の進め方が合わないことはあるからです。
たとえば、部下を信頼しているからこそ、細かく口を出さずに任せる上司がいるとします。
そのやり方で伸びる人もいるでしょう。
一方で、目的や役割がある程度明確なほうが力を発揮できる人にとっては、「任せる」が「放っておかれる」に近く感じられることがあります。
逆に、丁寧にフォローする上司もいます。頻繁に声をかけ、進捗を確認し、細かくアドバイスをする。
ありがたいと感じる人もいれば、「信用されていない」「自分で考える余地がない」と疲れる人もいます。
どちらも、悪気があるわけではありません。
むしろ、よかれと思ってやっています。
ここに、組織の難しさがあります。
組織では「いい人か、悪い人か」ではなく、人と人、人と仕事の「組み合わせ」を見ることが大切です。
上司がどれだけ誠実でも、その人の関わり方と部下が力を発揮できる条件が噛み合っていなければ、部下は少しずつ疲れていきます。
部下によって関わり方を調節する
しかも、「いい上司」だからこそ、その疲れは表に出にくいことがあります。
「こんなに気にかけてもらっているのに、不満を言うのは申し訳ない」
「自分のほうがわがままなのではないか」
「この上司で合わないなら、自分はどこでも無理なのでは」
そうやって、部下はもやもやを溜め込みます。
上司の側も、関係は悪くないと思っているので、異変に気づきにくい。
だから、退職の話が出たときに初めて驚くのです。
本当に見るべきなのは、「嫌われているかどうか」ではありません。
この部下は、今の仕事の任され方で力を発揮できているか。相談の頻度は合っているか。本人の持ち味と仕事は噛み合っているか。
こうした点を見ることが大切です。
だから、「何かあったら言ってね」と伝えるだけでは、十分ではありません。相手が何も言ってこないから問題がない、とも限りません。
上司に必要なのは、「自分はいい上司でいられているか」を気にすることではなく、「この人にとって、今の関わり方は合っているか」を見続けることです。
人柄のよさだけでは埋まらないズレがある。
その事実を認めることが、組織を見直す第一歩です。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太