求められるのは利上げの予定表でなく
利上げの「判断の根拠」を示すこと
中央銀行が将来の金利経路を詳しく示すということについては、見解が分かれていることは確かだ。
例えば、FRB(米連邦準備制度理事会)のウォーシュ新議長は、平時のフォワードガイダンスに否定的な立場を示している。
経済の先行きが不確実であるにもかかわらず、中央銀行が将来の政策を事前に約束すれば、その約束に拘束されて、情勢の変化に機動的に対応できなくなる。また、市場参加者が、経済指標ではなく、中央銀行の発言から次の政策変更を読み取ることばかりに集中する危険もある。
一方で中央銀行も市場価格を政策判断の材料にする。市場が中央銀行の発言を元に動き、中央銀行がその市場の動きを見て政策を決めれば、市場価格が経済の実態ではなく、中央銀行の発言を反映するだけになりかねない。
ウォーシュ議長は、物価や景気に関する数値を一定の計算式に当てはめて政策金利を決めるような、機械的なルールにも慎重だ。こうした方法では、経済構造や外部環境の変化に対応できないからだ。
ウォーシュ議長の批判には十分な理由がある。しかし、フォワードガイダンスを否定することは、中央銀行が何も説明しなくてよいことを意味しない。ウォーシュ議長自身も、基調的な物価上昇率が十分な速さで明確に目標へ向かわない限り、FRBにはなすべき仕事があるとした。
日銀も将来の金利を約束するのではなく、現在の経済をどう評価し、どのような原則とリスク判断に基づいて行動するのかを説明すべきだ。求められるのは利上げの予定表ではなく、判断の根拠だ。
物価上昇と円安をどう評価するか
輸入インフレか国内物価持続的上昇への移行か
為替市場が注目するのは、第一に、日銀が現在の物価上昇を単なる一時的な輸入インフレとみているのか、それとも国内の持続的な物価上昇へ移行したとみているのかだ。日銀はこのことを明確にすべきだ。
輸入価格上昇そのものを金融政策で止めることはできない。しかし、それが企業の販売価格や賃金に波及し、さらに賃金上昇が価格を押し上げるなら、需要や期待インフレ率への二次的波及を、金融政策によって抑える必要がある。
第二に、円安を金融政策の判断から切り離さないことが必要だ。日銀は特定の為替水準を目標にする機関ではない。また、為替介入を行うのも政府だ。しかし、円安が輸入物価や賃金、企業の価格設定、期待インフレ率に影響する以上、物価安定を担う日銀にとって円安が無関係であるはずはない。
日銀は、円安そのものを理由に利上げするのではなく、円安が国内物価に及ぼす波及を政策判断に反映させると説明すべきだ。
また、アメリカの要求に従って利上げするのではなく、国内の物価安定という自らの責務に基づく判断であることも明確にしなければならない。そうでなければ、日銀の独立性に疑念が生じる。







