洋服を手に接客する女性店員と客の女性写真はイメージです Photo:PIXTA

客は「これが欲しい」と口にする前に、表情やしぐさで興味を漏らしていることがある。販売経験が浅いにもかかわらず、高級な手作りパイプの販売で優秀な成績を上げていた人物は、商品の説明をしながら客の「ある変化」をひそかに観察していた。その接客法には、売り込む前に相手の心を動かすヒントがある。※本稿は、コミュニケーション・トレーナーの荒木シゲル『一瞬で人の心を操るマインド・ハック この「表情」「しぐさ」には、誰も逆らえない!』(三笠書房)の一部を抜粋・編集したものです。

「買う気があるか」は
最初から決めつけない

 あなたがショップの店員で、ふらっと入店してきたお客様が目の前にいるとします。買うつもりがあるのか、それともただの下見なのか、この時点ではわかりません。

 しかし、相手の気持ちをくみ取ってうまく接することができれば、その場で購入させることは十分に可能です。

 ポイントは「距離の使い方」です。結論から言うと、この場面で効果的なのは、相手のパーソナルスペースである70センチ以内に接近し、「興味・関心の表情」(編集部注/眉毛全体を上げる表情を、筆者はこう呼んでいる)で商品をすすめることです。この距離感が相手の無意識に強く影響を与え、表情には相手の感情を誘発する効果があります。

 ただし、やみくもに接近して商品をすすめるだけでは相手の心は動きません。確実な効果を得るためには、空気を読みながら段階を踏む必要があります。

 入店したお客様を前にすぐに距離を詰めるのは危険な行為です。最初のポジションは2~3メートル。接客における「待機ポジション」です。

 お客様の視界に自然に入りつつも、重要なのは警戒心を生まないこと。胸やつま先を相手に向け、無言のまま「あなたに気づいています」と伝えます。この段階で重要なのは安心感を崩さないことです。

 次にお客様の振る舞いを観察します。

・特定のエリアにとどまる。
・商品を手に取る。
・価格や説明を読む。

 といった動きは関心のサイン。このような兆候があれば迷わず行動を起こします。

客が反応したら
距離を少しずつ縮める

 軽いアイコンタクトや小さな会釈で自分の存在をアピールします。相手が視線を返してきたら、距離を1メートルほどに縮めて、「何かお探しですか?」とソフトに話しかけてみましょう。

 相手の反応が薄ければ「何かありましたら、お気軽に声をかけてくださいね」と伝え、一旦距離を取ります。焦らず、仕掛けどきを見極めるのです。

 もし、「リビングのエアコンが壊れてしまって……」「来週、出張なのにスーツケースがなくて……」などと返事があったら、踏み込む合図です。

 ここで距離を70センチ近くにまで縮めます。腕を伸ばしてもギリギリ届かないエリアです。同時に、あなたの言葉が相手の無意識に影響を与えることができる距離でもあります。

 商品の価格・機能・デザインなどを説明しながら、さらに相手の反応を観察します。ここが最も重要なポイントです。特に表情の変化に注目しましょう。

・眉が動く(興味・関心もしくは熟考の眉毛)。
・唇をプレスする。
・目に力が入る。
・頭の動きが増える。

 といったことが確認できたらチャンス到来です。表情が変化するということは心が動いた、ということを意味するからです。