さらに、第三者へ聞かせる、データを送る、内容を共有する、といった行為があれば、「不正開示」としてより重く評価されます。

 ここでよくある誤解があります。それは、「売っていない」「お金をもらっていない」というものです。しかし不正競争防止法は、利益を得たかどうかではなく、営業秘密を不正に開示したかどうか、そのものを問題にします。つまり、

(1)営業秘密が含まれる会議を
(2)無断で録音し
(3)会社の管理外で保存し
(4)外部に渡した

 という流れが認められれば、刑事事件として扱われる可能性があるのです。

 録音は、たしかに便利な機能です。ただし、便利さと合法は一致しません。ここを取り違えると、一気に刑事ラインを越えます。

 会議の録音で一番危険なのは、録音そのものよりも、その後の扱いです。多くの人は、「家族に聞かせただけ」「恋人に相談しただけ」「親しい友人だった」と考えます。

 しかし法律上は、家族や恋人であっても第三者です。相手との関係性は関係ありません。会社の外の人に聞かせた時点で、問題になる可能性があります。

 また、音声データも資料と同じように扱うことが大切です。スマートフォン。私用メール。個人クラウド。私用パソコン(PC)。こうした場所に保存すると、会社の管理外へ出たと評価されることがあります。録音が必要な場合は、

・会社や会議参加者の許可を得る
・録音の目的を明確にする
・保存場所を決める

 この3点を事前に確認しましょう。そして録音した後も、「誰にも聞かせない」「勝手に共有しない」を徹底しましょう。

 情報漏えい事件は、悪意のある売却よりも、「これくらいなら大丈夫」から始まることが少なくありません。だからこそ、録音データは会社の情報である、という意識を持つことが、自分と会社を守ることにつながるのです。

会議録音のルール化が
情報漏えいを防ぐ

 会社側がまずやるべきなのは、会議録音に関するルールを明文化することです。録音してよい会議なのか。許可は誰が出すのか。保存先はどこか。いつ削除するのか。こうしたルールが曖昧だと、社員は自己判断で動くようになります。

『これだけで、逮捕「知らなかった」では済まされない29の落とし穴』書影『これだけで、逮捕「知らなかった」では済まされない29の落とし穴』(森 雅人著、足立直矢監修、PHP研究所)

 また、「音声も営業秘密になり得る」という認識を社内で共有することも重要です。資料の管理は厳しいのに、録音については何も決まっていない、という会社は意外と多くあります。

 さらに、私物端末の扱いも明確にしておくべきです。特にBYOD(Bring Your Own Device)を認めている会社では、録音や保存の可否をルール化しておかないと、思わぬ情報漏えいにつながることがあります。

 最後に、議事録の正式ルートを用意しましょう。録音しなくても済む環境を作れるよう、公式の議事録を共有したり、共有フォルダを作ったり、確認フローを立てたり。正式なルートがあれば、無断録音は確実になくなります。

 会議の録音トラブルは、便利さと油断から起きるもの。だからこそ、ルールと代替手段が最大の防犯になるのです。