
2025年3月24日、金融庁は大手損害保険会社4社が起こした情報漏えい問題に対して業務改善命令を出した。その処分内容を記した文書には、これまでとは違った金融庁の問題意識が透けて見える。そこで、連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、情報漏えいの中身について詳述すると共に、金融庁の本音を考察した。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
損保4社の情報漏えいに対し
金融庁が業務改善命令を発出

Q 2025年3月24日、金融庁が大手損害保険会社4社(東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険)に対し、保険契約者情報が漏えいしていた問題について保険業法に基づく業務改善命令を出しましたね。

A また、損保4社合計で1271の代理店から約234万件の契約者情報が漏えいし、また、損保4社から代理店に出向していた262人が、代理店の了承を得ずに約34万件の契約者情報を出向元である損保会社に漏えいさせていました。

Q 合計すると約268万件ですか。膨大な数の情報漏えいですね。ただ、前者と後者の情報漏えいは、だいぶ内容が異なりますね。

A 金融庁は、前者を「代理店事案」、後者を「出向者事案」というふうに区別しています。
代理店事案とは、自動車ディーラーや中古車販売店などを営む兼業の保険代理店で、保険契約の状況を損害保険各社と共有する際に契約者の個人情報が含まれていた事案です。
そして、出向者事案とは、保険代理店への損保会社からの出向者が代理店の了承を得ずに、他損保の契約情報や保険契約以外の顧客情報(銀行の預金者や融資先リスト、社外秘の業務資料など)を出向元の損保会社に送付していた事案です。

Q 損保4社による違いはあるのでしょうか。
次ページでは、大手損保4社の情報漏えい件数の詳細をまとめた図表とともに、金融庁が行政処分を行う際に公表した文書から読み取れる新たな問題意識について詳述する。