なぜ中国最高指導部の情報が漏れ続けるのか

 中国の情報統制は、国内メディアを統制する中央宣伝部、ネット空間を管理する中央網信弁、治安を担う公安機関、そして防諜・国家安全を担う国家安全部などによる巨大なシステムで成り立っている。

 ところが、2026年6月15日の国務院専題学習会議に国家安全部長の陳一新が姿を見せず、その後しばらく公開活動が確認されなかったことが海外で注目された。習氏側近として国家安全機構の強化を進めてきた陳氏の不在だけに、さまざまな憶測を呼んだ。

 その陳氏が9月13日、人工知能(AI)の安全リスクに関する署名文章を発表した。この中で陳氏は、政治安全への脅威を六大リスクの筆頭に置き、生成AIを使った政治的デマや認知戦、サイバー攻撃、海外AIを通じた情報漏洩などへの強い警戒感を示している。

図表:陳一新公安部長が示したAIが生む「六大安全リスク」出典: 拡大画像表示

 私には、この文章はほかならぬ習氏を意識したものにも見える。「AIを使って、これまで以上に情報統制を強化する」というメッセージとも読める。

 では、なぜ「AI監視強化」なのか。それは、現在の中国情報機関が従来型の人的監視やネット検閲だけでは、情報漏洩への対応が難しくなっているからではないか。

 では、誰が習氏の重要情報をリークしているのか。

 私が最も注目している仮説が、軍内に残った人的ネットワークと長老グループである。

 習氏の健康状態や北戴河会議での動静などをリアルタイムで把握できるのは、警護・通信・医療などに接触できる関係者だ。一方、「情報を外に出す」という政治的判断を軍の将校個人がおこなうにはリスクが大きすぎる。

 仮に内部関係者が意図的に情報を外部へ流しているのであれば、何らかの人的ネットワークが関与している可能性も考えられる。その候補として考えられるのが、歴代指導部につながる長老ネットワークである。