それはなぜか。相談できない人は、真面目で、責任感が強く、人の話をちゃんと聞ける人だからです。だから、誰かに相談される。でも、自分は相談しない。

「相談していいんですよ」と伝えると、「佐野さんだから相談できるんです」と言われます。つまり、「専門性があるように見えて、信頼できるし、お金も払ってるから、罪悪感もない」と考えています。

 でも、考えてみてください。あなたが誰かに相談されたとき、うれしかったですよね。それは、相手があなたを信頼してくれたからです。あなたが誰かに相談するとき、相手も同じように感じます。うれしい輪が、ぐるぐる回っていくのです。

 では、相談とは何か。こう考えてみてください。

 相談とは、使う思考の車線を切り替えることです。いわば、思考のレンタルです。

 思考には3車線(情報・感情・意味)があります。混んでいたら、別の車線に移ればいい。でも、ひとりだと、どの車線が混んでいるのか、どの車線に移ればいいのか、わからない。だから、相談が必要なのです。

 たとえば、いろいろ分析したりまとめたりしているけれど言い出せないときは、「モヤモヤしているんです」と感情だけ伝える。感情だけ先走っているときは、「冷静じゃないんですけど、一緒にまとめる時間をくれますか?」と情報を伝える。相談相手は、あなたの思考の車線を切り替えてくれるのです。

 情報が多すぎてわけがわからなくなっているとき、時系列でまとめてくれる人がいます。自分の気持ちに蓋をしてしまっているときに、「本来のあなたは、こう思うことが多くない?」と思い出させてくれる人もいます。「自分がなんでこんなに悩んでいるのか。誰かを恨みたい気分だ」なんて漏らしたときに、「もしかしたら、こんな学びをする機会なのかもね」と先生のように振る舞ってくれる人もいます。

 頭から感情へ。感情から意味へ。その反対向きの移行もあります。相談するとは、相手を信頼し、思考の車線を切り替えてもらうことなのです。

心や頭の中を外に出さないと
自分の内面は見えない

 伝えたいことがまとまっていなかったり正確にすべてを伝えられなかったりするのは、風邪をひいて病院へ行くときと似ていますね。そもそも風邪なのか何なのか、原因も治療法もわからないから病院に行くわけです。正確に自分の状態を伝えられなくても、とりあえず行きます。悩み相談も、本来はそれくらいの気軽さでかまいません。

 病院に行くのも、医者の経験や知恵を借りているわけです。悩み相談も同じです。迷惑をかけるどころか、むしろ相手の経験や知恵、さらには「この人なら話してもいい」「話を聞いてもらいたい」と、人柄に対する信頼までしているのです。

「風邪と悩みは違う」と思う人もいるかもしれません。風邪は「体の不調」で客観的だけど、悩みは「心・頭の問題」で主観的だから、病院に行くのと同じにはならない、と。

 確かに、違いはあります。でも、共通点があります。体の不調も、心・頭の問題も、目に見えないという点です。

 自分の姿と同じです。鏡がないと、自分の外見は見えません。人と話すか、文字に書くか。つまり、自分の心や頭の中を外に出さないと、自分の内面は見えないのです。

 相談できる人がいないのではありません。相談の仕方がわからなかっただけなのです。