リスキリング写真はイメージです Photo:PIXTA

多くの企業で「リスキリング」が求められるが、単に学び直すだけでは十分ではない。知識やスキルを身につけること以上に重要なのが「自分で自分を学ぶ」スキルだと語るのが、コピーライターの荒木俊哉氏だ。変化が大きい時代の荒波を乗りこなすために、自分の軸を明確にすることが今まで以上に求められる。そして、その自己理解のためには、他の誰かに相談するよりも「自分」と話すことが最も効果的なのだという。※本稿は、荒木俊哉『こうやって頭のなかを言語化する。』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

リスキリングが必要な今こそ問う
「人は、どうやって学ぶのか」

 最近「リスキリング」という言葉を、よく耳にします。英語で「Re-skilling」と表記されるように、「新たな知識や技術を学び直す」という意味です。

 特に、デジタル化の波で仕事の内容や進め方が大きく変化していくなかで、その変化に対応するスキルを学ぶ機会を増やそうと、経済産業省が中心となって国全体でリスキリングの流れが加速しています。

「学校を卒業すれば、もう勉強しなくていいと思っていたのに……」

 そんな声が聞こえてきそうですが、残念ながら、時代は変わってしまったようです。時代の変化に文句を言っても仕方がないので、ここでは、そもそも「学ぶ」とはなにかについて、少し考えてみたいと思います。

「人は、どうやって学ぶのか」

 そう聞かれて、パッと答えられるでしょうか?意外と難しいですよね。

 イメージしやすいように、小さな子どもが言葉を覚えていく様子を想像しながら考えてみたいと思います。

 小さな子どもは、文字を読むことができません。それでも言葉を覚え、話せるようになります。それは、どうしてでしょうか?

 子どもは、まわりの大人たちの話す言葉を、まずは音で判断して、それと同じ音を声に出してみます。そして、まわりの反応を見ます。

 もし、その反応が微妙だった場合、自分が発した音がずれていると理解して、もう1度、調整して言葉を声に出します。そして、再びまわりの大人たちの反応を見ながら、しっくりくるまで修正する。その繰り返しで言葉を学んでいくわけです。

 この「繰り返す」という行為こそが、学ぶことそのものといえます。

答えがない時代に必要なのは
「自分で自分を学ぶ」姿勢

 私が、なぜ、いきなり学ぶことについて語りだしたのか?

 それには理由があります。

 一般的に、新しい知識やスキルを身につけることを学ぶことと考える人が多いと思いますが、これからの答えのない時代には、それ以上に「自分で自分を学ぶ」姿勢が大切になる。私は、そう考えます。

 そして、本記事のテーマである自分の頭のなかを言語化する行為は、自分のことを繰り返し学んでいくことそのものでもあります。

 自分は、どういう人間なのか。自分が大切にしているものは、なんなのか。本当は、なにに悩んでいるのか。自分のことを繰り返し学ぶことによって、これまで気づかなかった自分の思いや意見をつかめるようになります。