悩みを消すのをやめたら
自分のままでいられた
Nさんは、ここに気づきました。悩みを重くしていたのは、量ではありませんでした。「消えるべきなのに消えない」という、その物差しのほうだったのです。
ここからがNさんの転換です。
悩みを消そうとするのをやめた。代わりに、悩みとの付き合い方を変えた。
この違いは思っているより大きいのです。悩みを消そうとしているあいだは悩みが主役になります。悩みが来るたびに振り回され、消えてくれないと負けた気がします。
でも付き合い方を変えるなら、主役は自分のままでいられます。悩みの量は減らせなくても、迎え方は自分で選べるからです。「またか」と迎えるか、「来た来た」と迎えるか。そこだけは、いつでも自分の手の中にあります。
「ビンゴになったらケーキを買う」なんていう発想が生まれたのもここからです。悩みの量はコントロールできません。でも、悩みとどう遊ぶかは自由です。
最後に、Nさんはこんなことも言いました。
「いや、どうせまた悩みますよ。もうそれがいいんですよ。これまでは人生を右肩上がりの階段みたいに捉えていたんです。これがきついんですよ。一時的に『もう克服した』と思えば、無敵な自分に酔える。
でも、酔いはさめる。そのときに自己嫌悪になるんです」
「では、これからどうするんですか」と尋ねると、Nさんは迷わず答えてくれました。
「これからもループしますよ。でも、自分からループしていけば、それはサイクルじゃないですか。負のループはもう飽きたので、正のサイクルでいきます」
思考渋滞をも楽しんで
自分の人生を運転したい
正直なところ、私もまだ同じ悩みを繰り返しています。頼られると断れなくなって、抱え込んで、最後に爆発する。この根っこは20年以上、いまだに私の中にあります。
昔と変わったところもあります。以前は爆発するまで気づけませんでした。いまは、すり減り始めた早いうちに「ああ、またこれが出てきたな」と気づける。気づくのが年々早くなって、立て直すのも早くなりました。私もちゃんと進んでいます。
『「考えているのに進めない」がなくなる 思考渋滞から抜け出す方法』(佐野創太、あさ出版)
気づきが早くなるのは、その悩みに見覚えがあるからです。一度通った道なら、二度目は「これはあのときのやつだ」とわかる。同じ悩みを繰り返すほど、自分の悩みのパターンに詳しくなっていく。
悩むほど、自分の取扱説明書が分厚くなる。どんなときに自分は詰まりやすいのか。どの渋滞を、どう抜けてきたのか。それが少しずつ、自分でわかるようになっていく。一度抜けた渋滞を、次は速く流せるようになる。それが成長です。
思考渋滞のない人生を目指す必要はありません。どこで詰まりやすいのかを知り、どう抜けるかを知り、ときには思考渋滞ごと楽しめるようになる。
そんなふうに、自分の人生を運転できるようになればいいのだと思います。







