アメリカは中国との対決を先送りにして、その間、重要鉱物の代替供給網を整え、同時に習氏との個人的な関係を作り、トランプ氏個人への依存を強めさせる。そのことによって、米中関係を安定させ、中国による台湾への軍事行動を抑止しつつ、イラン問題でも協力を引き出す可能性が高められる。
私はこれこそがトランプ氏の計算の一つだった可能性があり、今回の会談を表面だけを見て「成果がなかった」と評価するのは早計だと考える。
日本は「時間稼ぎ」を最大限利用せよ
こうしたトランプ氏の計算を前提としたとき、日本がとるべき道は自ずと明らかになる。
第一に、米中首脳の「親密な演出」に過剰反応しないことだ。
日本のメディアや一部の有識者は、米中が接近するたびに「頭越し外交(ジャパン・パッシング)」の懸念を抱きがちだ。上述したように、今回の厚遇はトランプ氏特有の相手を絡め取るための手法であり、同盟国を見捨てるサインではない。
むしろ、会談直前に日米首脳や外相間で緊密なすり合わせが行われている事実こそを重く見るべきだ。
第二に、トランプ氏が作り出したこの「猶予期間(モラトリアム)」を最大限に利用し、経済安全保障の構築を急ぐことだ。
トランプ氏が対中衝突を先送りしている間に、日本は米国やオーストラリア、グローバルサウス諸国と連携し、レアアースをはじめとする重要鉱物の代替サプライチェーンを構築し、中国への依存度を決定的に引き下げなければならない。中国の「レアアースカード」の賞味期限が切れたときこそ、米中対立の実質的な第二幕が上がるからだ。
第三に、トランプ氏に対して「日本こそが最も価値あるパートナーである」と継続的に認識させることだ。トランプ氏は個人的な関係を重んじる一方で、極めてドライな損得勘定で動く。日本が半導体規制や防衛力強化、供給網の再編で米国の戦略にいかに不可欠な存在かを、具体的な「ディール」の形で示し続ける必要がある。
米中首脳会談の「成果のなさ」は、嵐の前の静けさである。華やかな国賓待遇の裏で進む地政学的な時間との戦いに、日本もすでに組み込まれていることを忘れてはならない。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)







