ドナルド・トランプトランプ大統領 Photo:Kevin Dietsch/gettyimages

FRBが「巨大中央銀行」から変わり始めた

 2026年8月28日、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済政策シンポジウムで、FRB(米連邦準備制度理事会)のケビン・ウォーシュ議長が講演した。

 ウォーシュ氏はこれまでのFRB議長が当然の義務のようにおこなってきたフォワードガイダンス(予告)の発信を抑えて、その役割を薄める姿勢を見せてきた。

 また、インフレに対して予想以上に厳しい姿勢を示したことで、利上げを進める「タカ派」と見られている。

 だが、多くのマーケット関係者が金利が上がるかどうかを見極めようとしている一方で、この講演は、FRBがこれまで当然のように行ってきた金融政策のあり方そのものを、根本から見直そうとしている姿勢が見て取れるものとなった。

 FRBには「マーケットへの情報発信」「バランスシート政策」「経済データ」「生産性と雇用」「インフレ分析」という5つのタスクフォースが設置されている。ウォーシュ氏は、7月14日の議会証言においてFRBの目的を「第一原理から始め、難しい問いを投げかけ、現在の慣行を検証し、代替案を考える」ことだと説明している。

 特に注目すべきは、上述したフォワードガイダンスによる「マーケットへの情報発信」のほか、FRBの巨大なバランスシートと「潤沢準備制度(※)」まで見直しの対象になっていることである。

※「潤沢準備制度(ample reserves regime)」は、銀行が中央銀行に預ける準備預金を、需要をはるかに上回る水準に保ったうえで、政策金利を誘導するしくみのこと。

 これは「FRBが金融政策の方針を調整する」というレベルの話ではない。2008年のリーマン・ショック以降、巨大化し続けてきたFRBそのものの「レジームチェンジ」が、トランプ政権下で始まったと考えるべきだ。

「トランプ対パウエル」で深まったFRBへの疑問

 トランプ大統領がFRBに疑問を持つようになった原点は、第一次政権で起こったトランプ政権とFRBの対立にある。だが、ウォーシュ氏の前任者であるジェローム・パウエル氏をFRB議長に選んだのは、当のトランプ大統領だった。

 2018年、トランプ大統領の執拗な利下げの圧力にもかかわらず、パウエルFRBはかたくなに利上げを強行した。

 トランプ大統領が減税や規制緩和などによって景気を押し上げようとしていた一方で、FRBは金融を引き締めるという逆の動きをすること。これは、トランプ氏からすれば、アクセルを踏んでいる横からFRBにブレーキを踏まれているようなものである。

 トランプ大統領は、コントロールの効かないパウエルFRBに対して、一方的に怒りを増幅させた。

 第一次政権のトランプ大統領がFRBに求めたのは、金利を下げることだった。だが、大統領にはFRBに命令する権限がない。トランプ大統領は経済政策がFRBに「邪魔」されることにいらだちを募らせ、アメリカの金融政策が抱える構造的欠陥を痛感した。

 では、トランプ大統領から見た「アメリカの金融政策が抱える構造的欠陥」とは何か。