これだけでも生きていける
完全食に近い食べ物
これはつまり、そばはそれだけでもタンパク質のバランスが崩れにくい食べものだということです。実際、歴史のなかでそばは「命をつなぐ食品」として機能してきました。飢饉の際に重宝されたのは、育てやすさだけでなく、これひとつで体を支えられる栄養バランスがあったからです。
さらに、そば粉には脂質も含まれています。
胚に蓄えられた脂質はエネルギー密度が高く、少量で多くのカロリーを補える。山岳地帯での労働や長距離移動に適した理由もここにあります。
ただし、この脂質は時間とともに酸化しやすいという側面も持っています。
挽きたてのそば粉が珍重されるのは、風味の劣化が進んでいないためです。冷蔵保存が行われるのも、この酸化を抑えるためです。
そば粉は、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールをバランスよく含んだ穀物です。「完全食」という言葉は大げさかもしれませんが、それにもっとも近い存在であることは間違いありません。
そば粉の栄養バランスの高さは、歴史のなかでも証明されています。
比叡山の千日回峰行では、修行者は長期間にわたり山中を歩き続けますが、その間、米や麦といった五穀は断たれます。しかし、そばだけは許されてきました。
ソバはタデ科の植物であり五穀に含まれないという理由もありますが、それ以上に、体を支える食べものとして理にかなっていたからでしょう。
そば粉を水で練るだけで食べられる「そばがき」は、火を使わずに摂取できる携行食としても優れています。忍者の兵糧丸(編集部注/戦国時代から江戸時代にかけて使われていた丸薬状の携帯保存食)にもそば粉が使われていました。
現代でもファスティングの準備食や回復食に最適です。
いずれも共通しているのは、限られた量で体を維持できる食べものが求められていたということです。ソバは、ほかの穀物に比べて「それだけを食べ続けても体のバランスが崩れにくい」という性質を持っています。
この点こそが、そば粉の真の強さといえるでしょう。







