低GI、高タンパク…
現代人にも嬉しい蕎麦の特徴
さらに、そばを語るうえで外せない成分がルチンです。
ルチンはポリフェノールの一種で、毛細血管を強化し、血圧を下げる働きがあるとされています。
毛細血管は体のすみずみに張り巡らされた極細の血管で、その壁が弱くなると血流が滞ったり、出血しやすくなったりします。ルチンはこの管壁を保つ役割を果たすとされ、血管の健康を支える成分として注目されてきました。
かつてはビタミンPと呼ばれていた時期もありましたが、現在はポリフェノールの一種として位置づけられ、ルチン単体というより、さまざまなポリフェノールが協調して働く、「シナジー効果」が重視されるようになっています。
それでも、そばに含まれるルチンの量は際立って多く、日常的に摂取できる食品としての価値は高いといえるでしょう。
そばの価値は、現代の健康志向とも重なります。
そばのデンプンは血糖値を上げにくく、GI値(編集部注/食品を摂取した際の血糖値の上がりやすい度合いを示す指標)は白パンを100としたとき、コシヒカリの96に対して88と低めです。
これは、消化されにくいレジスタントスターチを含むので、血糖値の上昇が緩やかになるためと考えられています。
さらに、そば粉は高タンパクでビタミンB群やミネラルも豊富です。
グルテンを含まないため、グルテンフリー食としても利用されています。海外でも健康食品として注目され、さまざまな形で取り入れられています。
低GI、高タンパク、グルテンフリー。
現代の栄養学が重視する要素を、そばは昔から備えていました。
加えて、そばはカロリーも比較的控えめです。一人前で約300キロカロリー前後と、他の麺類に比べて軽い食事になります。
そして、そばの栄養を余さず取り入れる知恵が「そば湯」です。
『ビジネスエリートのための 教養としての蕎麦』(井上直人、あさ出版)
そばを茹でた湯には、水溶性のタンパク質やビタミンB群などが溶け出しています。残ったつゆに注いで飲むことで、そば粉の成分を無駄なく摂取できる仕組みです。
近年では抗酸化作用も指摘され、そば湯の価値は改めて見直されています。
そばは、自然がつくり出した栄養バランスをそのまま持ち、さらにそれを生かす食べ方まで備えた食べものです。
江戸の人々は科学的な知識を持たずとも、その効用を経験的に理解していました。
現代の栄養学が追いかけている理想を、すでに体現していたといってもよいでしょう(図3-8)。
同書より転載 拡大画像表示







