乗ってはいけない
「感情の土俵」

 もう一つ注意してほしいのが、「相手の話を受け止めましょう」と言われたときに、相手の発言をそのまま繰り返してしまうことです。

 いわゆる「オウム返し」ですね。

 たとえば相手が、「昨日、担当者から連絡がなかったんですよ」と言ったときに、「昨日、担当者から連絡がなかったんですね」と文章を丸ごと繰り返す。

 これでは場合によっては、「ばかにしているのか」「ただ繰り返しているだけではないか」と受け取られてしまいます。

 繰り返すのであれば、文章全部ではなく、「連絡の件ですね」「日程のことを気にされているのですね」といったように、ポイントを短く返したほうがいいでしょう。

 相手を冷静にするために必要なのは、こちらが“正しさ”で勝つことではありません。

 相手の怒りの奥にある「何を分かってほしいのか」を探り、感情の話から事実の話へと戻していくことです。

 もちろん、「状況を確認させてください」と言えば、どんな人でも必ず怒りが収まるわけではありません。

 私自身、相談業務をしている中で、「もしもし」と言っただけで「もしもしって言うな」と怒鳴られた経験があります。そこまで感情が高ぶっている人に対しては、正論だけで対応できないこともあります。

 それでも、「状況を確認させてください」は、相手を否定せず、言い訳にもならず、事実確認へと進むための入口として、非常に使いやすい言葉だと思います。

 そもそも「感じのいい人」とは、相手に何でも合わせる人ではありません。

 私は、相手を「否定しない」「決めつけない」「追い詰めない」ということが大切だと思っています。そのうえで、自分の意見や必要なことはきちんと伝える。

 感情的な相手を前にしたときこそ、こちらまで感情の土俵に乗らない。

 そんなときの最初の一言として、「状況を確認させてください」を覚えておくと、きっと役に立つと思います。

第2回記事<「これもお願いできる?」仕事を押しつけてくる人から身を守る“感じのいい返し”とは?>は、10月1日(木)午前7時30分に公開予定です。大野萌子氏をフォローすることで、取材記事(全3回)をメールでお送りすることができます。