本来、照明の交換工事そのものは、始まってしまえば短期間で終わる比較的小規模なものだ。そのためか、「直前に動けば間に合う」と軽視されてしまうきらいがある。だが、器具の納品が長期化している今、もはやその考え方は通用しない。いくら工事自体がすぐ終わるとしても、取り付ける器具が手元に届かなければ着工すらできないからだ。従来通りの感覚のまま対応を先送りにしていれば、いざ動こうとした時には「モノがなくてお手上げ」という事態になりかねない。

 さらに見落とせないのが、照明器具そのものの「寿命」だ。これまでは、照明が消えても「電球(管球)を替えれば済む」のが当たり前だった。だが、設置から年数が経ち、器具本体が経年劣化で壊れてしまった場合は、器具ごと交換するしかない。

 つまり2027年末を過ぎて旧来の蛍光灯や関連パーツの在庫が市場から消えていけば、対応を先送りにしたままある日突然器具が壊れても、電球を替えることもできず、代わりの器具も手に入らない。暗くなった共用部を復旧させる手立てすら失ってしまうことになる。

平均約15%の値上げで膨らむ更新費用
修繕積立金を圧迫するもうひとつの理由

 価格面での圧迫も、すでに現実のものとなっている。前述の通り、今年に入り、主要メーカーは足並みをそろえて値上げに踏み切った。公表ベースで平均約15%の上昇だ。だが、私たちが現場で耳にするのは「値上げはこれで終わりではない」という見方である。

 実際、5~6月の総会シーズンを前に、半年前に取った見積もりの出し直しを迫られた管理組合もある。価格が動いている最中に意思決定を迫られるという、難しい局面を迎えているのが実情だ。規模の大きなマンションでは、共用部の照明器具をすべて更新するだけで1000万円を超えるケースも少なくない。15%の値上がりは、単純計算で150万円ものコスト増を意味する。

 もうひとつ見落とせないのが、消防法の規定に伴うコスト増だ。マンションの階段や廊下の非常灯には、停電時でも長時間点灯できる性能が求められる。この基準を満たす60分対応の器具は、通常の照明のおよそ2倍の価格にはね上がる。費用の高さが壁となり、結果として「古い蛍光灯器具のまま使い続けざるを得ない」という事態を招いている。安全のためにLED化を最も急ぐべき箇所が、皮肉にも最もコストがかさみ、更新が先送りされやすい場所になってしまっているのが現状だ。