Photo:nidone_tyo & Midjourney
米OpenAIのSora2による日本の版権著作物の無断学習と無断出力問題は、政府がOpenAIに直接是正を求める事態に発展した。実は、日本でのAI開発や普及に関して重要なインパクトを持ついわゆる「AI新法」が2025年に施行されている。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#14ではこの新法で何が変わるのか、そして企業がAIを活用する際に今後注意すべきことは何か。AIを活用する企業ならチェックすべき制度のポイントについて専門家に聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
Sora2の著作権侵害への政府対応の裏で機能した
9月施行のAI新法、その中身とは
「ポケモンが孫悟空とバーベキューする」「マリオとドラえもんとの飲み会に鬼滅の刃の無惨さまが乱入」――。日本の代表的な版権キャラクターが、簡単な指示文を入れるだけでいくらでも勝手に動画として生成される状態となっていたOpenAIの新サービス、Sora2。
米・ウォルト・ディズニー・カンパニーが版権を管理するディズニーやマーベルなどのキャラクターがことごとく出力できないのに対して、日本製のアニメやゲームなどのキャラクターは無尽蔵に勝手動画が生成できる状態となっていたことも相まって、大騒ぎとなった。
その後、サム・アルトマンOpenAI CEOが日本のコンテンツに言及しながら仕様を修正するとブログで声明を発表。完全ではないにしろ、一応は対応が行われた。
実は、こうしたOpenAI側のある程度早期の対応には、国を挙げての動きがあったもようだ。内閣府の知的財産戦略推進事務局から、OpenAI側にオンライン会議で著作権侵害となる行為をしないよう、直接要請が行われたという。
こうした政府の動きの裏には、Sora2リリースと同月の2025年に9月に施行されたばかりのある法律があった。人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律、通称「AI新法」である。
AIをどこまで法律で縛れるのか。そもそも、AIに対して国はどのようなスタンスで臨むのか。これは国によって大きな違いがあった。そして、日本についてはこれまでAIに対しての国としての対応をどうするかといった基本法すらない状態だった。それが、このAI新法の施行で初めて定義されたことになる。
事業活動にAIを取り入れることがこれからますます増える中、企業は法的な面からAIとどう向き合えばいいのか。実は新法には「国の施策への協力」という文字が記載されている。では、企業はどのような対応をすべきなのか?特にガイドラインや公的認証などの制度は注目で、一部はすでに始まっている。一定規模でAIを活用している企業なら、チェックをしておくべきだ。その際のポイントと併せて、次ページでは新法の制定で企業がいかに対応すべきかを、専門家の解説と共に詳しく見ていこう。







