「辞めちまえ」と言われ
33歳でトイレに駆け込んだ

 その場で、私は状況をそのまま報告しました。

 必要なデータが揃わず、分析に着手できていない。つまり、ほとんど進捗がない。その事実が、誰の目にも明らかになりました。

 なぜ分析が進んでいないのか、その現状を滔々と説明し、みんなの理解を求めようとする私。

 すると、パートナーからこう言われたのです。

「ないものを作るのがコンサルタントだろ。そんな覚悟もないなら、辞めちまえ」

 その言葉をぶつけられた瞬間、私は理不尽だと感じました。

 だって、材料が出てこない状況で、どうやって分析をしろというのか。

 手元に材料がないなりに、自分がいまやれることはやっているつもりでした。覚悟が足りないとまで言われる理由がわかりません。

 悔しさと情けなさが一気に込み上げました。

「ちょっとトイレに行ってきます」

 そう言い残して席を立ち、トイレに駆け込みました。個室にこもると、一人で泣きました。

 当時33歳。もう十分に、大人です。

 会社で泣いたのは、あれが初めてのことでした。

 しばらくして気持ちを整え、席に戻ったあと、頭の中に一つの考えが浮かびました。

 待っていても、次のレビューミーティングまでに材料が出てくる保証はありません。出てこないものを前提に議論をしていても、仕事は前に進まない。

「仕方ないなぁ、現場に行ってみるかぁ」

 そう思ったのです。

資料をくれない現場に通い
仕事を観察し続けた

 翌日から、私はエネルギー供給を担う部署に足を運ぶようになりました。

 現場が協力的なプロジェクトであれば、打ち合わせの時間を設けてもらい、インタビューの機会をもらいます。ですが、今回はそれが難しい状況でした。

 現場の人たちはコンサルに期待していません。むしろ自分たちにとって無駄な時間が増えるだけだと考えていました。コンサルの価値を感じていないからこそ、そのために時間を割こうという気にはならなかったのです。