そこで、業務に取り組む現場社員の横に立ち、朝から晩までひたすら観察し続けました。

 作業がどの順番で行われているのか。誰から誰にどのような資料が渡されているのか。

 するとこんなことが見えてきます。

「ああ、毎日こんな流れで仕事が進むんだな」
「この資料を作るのに、◯◯時間かけているようだ」
「チームの規模や、体制はこのぐらいか。1チームが持っている仕事は、◯◯案件ぐらいかな」

 業務プロセスと工数を、その場で書き起こし、可視化していきました。

 立ったまま、横でじっと、見続ける日々が続きました。

 もちろん、何をやっているのか見るだけではよくわからない場面にも遭遇します。

 それでも毎日観察を続けていると、これまで相手をしてくれなかった現場の社員が会話をしてくれるようになりました。よそ者の自分に対してまだ警戒はするけれど、質問ぐらいには答えてくれるようになったのです。

 と同時に、一人で抱え込むのではなく、同僚や上司にも相談しながら取り組みました。

相手の出方を待つだけでは
仕事は前に進まない

 当時読んだBPRに関する本のことはいまも覚えています。マイケル・ハマー、ジェイムズ・チャンピーによる『リエンジニアリング革命』です。

 他にも、海外企業を中心とした事例や、BCGが過去支援したプロジェクト資料を参考にしながら、業界やBPRに関する理解を深めていきました。

 どう進めれば限られた時間の中で価値を出せるのか、周囲の知恵を借りながら試行錯誤を重ねていったのです。

 そうこうするうちに、その営業所で行われる業務の一覧表とフロー図、そしてざっくりとした工数分析の叩き台を作ることができました。さらにその叩き台ができる頃には、徐々に現場との関係性が育まれ、内容を補うためのちょっとしたインタビューにも応じてもらえるようになっていきました。こうしてアウトプットを磨いていったのです。

 結果として、社内のレビューミーティングはもちろん通過し、クライアントへの報告会もそのアウトプットのおかげで、議論が進み、次の打ち手を考える材料になりました。

 そのとき私は、「こういうことか」と思ったのです。

 相手の出方を待つだけでは、仕事は進まない。

 相手に依存した働き方では、成果は何も変わらない。

 でも、自分でできることを試せば、少なくとも前には進めるのだと。

 それまで「与えられた仕事」として処理してきたものを、「自分が引き受けなければ仕事は前に進まない」とマインドを変えたのです。