笑顔で前を向く若手社員たち写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事を覚えるだけがOJTではなかった。かつて日本企業では、仕事への向き合い方や会社への意識まで、職場で身につけるべきものと考えられていた。現在にも通じる日本企業の人材育成の原型をたどる。※本稿は、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎『スキルとデキル 「能力」から見る近現代労働史』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

なぜ新人教育の中心は
OJTへ移っていったのか

 新入社員教育は導入教育(研修)と技能基礎教育(研修)からなり、前者は1週間程度、会社概要、就業規則、社会人としてのマナーから始まり、安全教育、規律訓練、労使関係教育と続きます。後者は基本技能が3カ月程度教育されます。その後職場に配置されて、上司や先輩の指導の下に計画的にOJTが始まります。

 一部の大企業では、新人にコーチャーやブラザー(入社2、3年目の先輩社員)を付けて、マンツーマンで仕事の仕方から生活指導まで行う仕組みが設けられましたが、中小企業では計画的OJTは少なくなり、小零細企業ではOJTという名の見よう見まねが一般的でした。

 また、OJTはジョブローテーションと組み合わされて、仕事の経験の幅を広げることで労働者の低位多能工化を促進することになりました。もっとも、日本を代表するような企業は伝統的な技能者養成を手放すことはなく、以上のようなジョブローテーション型のOJTの傍系・補完物として、養成工制度を維持し続けたことも記憶する必要があります。

 なおこれに加えて、1973年に発生し、その後数年にわたって日本経済を揺さぶった石油危機により、企業にとって必要なOff-JT(職場外研修)を遂行するだけの財政的余裕がなくなり、これまたやむを得ず低コストで遂行できるOJTにシフトせざるを得なかったという事情も無視できません。