そこで職業意識啓発として挙げられているのは、(1)つまらないと思われる仕事も軽く見ず、真剣に取り組む、(2)嫌な、厄介な仕事でも文句を言わず取り組む、(3)新しい仕事、困難な仕事を喜んで受け入れ、また自ら創り出す、といった精神訓話的なものであり、また職務転換や配置異動に伴い様々な助言指導をすることです。

 また企業意識啓発として挙げられているのは、(1)企業の存在意義・伝統・実態の理解、(2)自分の役割・立場・処遇などの満足感・安心感、(3)自発的・積極的・創造的な協働、(4)部門(職場)全体の雰囲気(集団精神)といった事柄で、確かに日本的な企業の在り方からすれば極めて重要な項目ですが、それがOJTなのかという違和感も覚えます。

 なお、仕事の方法・手順については、(1)習う準備をさせる、(2)作業を説明する、(3)やらせてみる、(4)教えた後を見る、という4段階に分け、それぞれについて詳しく解説しています。そのうち第3段階の「やらせてみる」は図4のようになっています。

 確かに懇切丁寧な指導ですが、これをOJT、つまり何らかの職務についての実地「訓練」であると言えば、肝心の職務が全く見えないではないかという声が聞こえてきそうです。その後30年間に出された山のようなOJT指南書は、どれもみな似たようなことを述べています。いずれにしても、この時期の日本で流行していたOJT思想は、こういうものであったのです。

図4 1970年代のOJTの実像――やらせてみる同書より転載 拡大画像表示