しかし近年、こうした状況は限界を迎えています。地方公務員の労働組合の1つ、全日本自治団体労働組合(自治労)が2020年に実施した調査によると、住民から迷惑行為や悪質クレームを受けた職員の約4分の3が「出勤が憂鬱になった」「仕事に集中できなくなった」「眠れなくなった」「休職・退職しようと思った」など何らかの悪影響を報告しました。「仕事に集中できなくなった」と回答した職場は公共交通分野でもっとも多く、なんとも恐ろしいことです。
除雪が遅くても住民と役所の
どちらかが悪いとは限らない
さて、このように書くと、「世の中には悪いヤツがいるもんだなぁ」「公務員はかわいそうに」という「悪い住民」対「一生懸命の公務員」のような構図が浮かび上がってきますが、実は話はそんなに単純ではありません。それがカスハラの難しさです。「悪い人がいる」では何の解決にもならない、それが筆者の考えです。
たとえば、あなたは日本有数の豪雪都市であるA市の住人です。1晩で100センチ積もることもあります。市の除雪事業は何十億円もの予算をつけて、真夜中もフル稼働です。なのに、あなたの家の前の道路の除雪はいつも後回しにされる。朝出かけるために車を出そうと思っても、雪が邪魔で出せない。そのため出勤の3時間も前に起きて、自力(そして人力)で雪かきをしなければなりません。別の大きい道路に面している家に住む人は、そんなことはありません。さすがにあんまりだと思って市役所に「どうにかしてくれ」と電話をしますが、いろいろ言い訳をして、結局状況は変わりません。話がどうにもならないから「上司を出せ」とか「市長を出せ」くらいは言うでしょう。怒りの勢いで、ひどい暴言が出るかもしれません。
立場を変えてみましょう。
あなたは市役所で除雪の采配を担当しています。毎年冬はたくさんの市民から除雪に関する苦情の電話がひっきりなしにかかってきて、他の仕事がまったく進みません。もう電話線を抜くか、市民に怒鳴り返してやりたいくらいです。







