原作発売から30年以上たっての映画化

『時には懺悔を』の原作は1994年に刊行された打海文三の同名小説である。打海は2007年に亡くなっている。この小説は、作者自身が重度の障害児を育てた経験をもとに書かれている。

 中島監督は原作を読んでからこれをいつか映画化したいと考えていたという。原作を手にとってから上映が叶うまで約20年かかっているのだそうだ。パンフレットの中で中島監督は、思い立った当時は「誰もが映画化は無理だと言った」と語っている。

 その理由の詳細は語られていないが、おそらくは重度の障害のある人をどのように撮るかという点に懸念があったのではないか。

 また、中島監督のこれまでの多くの作品とは違い、エンタメ的な要素が薄い。『下妻物語』のようなポップさ、『嫌われ松子の一生』の華やかなミュージカル、『来る』の大胆な祈祷シーンなど、見る人を画面に釘付けにするこれまでの作品と比べ、トーンは一貫して暗く、シビアな空気が作品を貫いている。

中島哲也監督中島哲也監督 出典:PRTIMES

 物語は「死んだ方がマシ」と言われていたある探偵が何者かに殺害されるところから始まるミステリーだが、だからといってスッキリしたラストが用意されるわけではない。むしろその逆とも言える。

 要するに、軽く視聴することができるデートムービーではないし、テーマについても大衆ウケするとは言い難い。

 さらに言えば、障害のある人とその家族や支援者をテーマに作品を撮ることには相当な覚悟が求められる。この問題に向き合う努力が足らないと見なされれば、大きな批判を招くことになりかねないテーマであるからだ。

 興行収入が見込めるかはわからない。しかも中途半端に撮ることが許されない題材。そのような作品に挑める環境が整うためには、有名監督でさえ時期を待たなければいけなかったということなのだろう。

 パンフレットの中では続けて「当時と違って、今回この企画を進めようとしたときに、興味を持ってくれる人たちがすごく多かった」とも語られている。