「ドーマーの条件」が示す
政府債務残高の対GDP比の将来

 日本財政の将来を左右するのは、金利だけではない。もう一つ重要なのは名目GDPの成長率だ。

 財政の持続可能性を考えるためには、金利と名目経済成長率の関係を見る必要がある。経済成長率が金利を上回っていれば、経済規模に対する債務の負担は軽くなりやすい。逆に、金利が成長率を上回れば、債務の利払い負担が経済の成長より速く増え、債務比率を安定させることが難しくなる。

 これは正確には、「ドーマーの条件」によって表される。その内容は次の通りだ。

 名目金利をi、名目GDP成長率をgとする。基礎的財政収支(プライマリーバランス)がゼロであると仮定する(基礎的財政収支とは、国債発行収入を除く歳入から、国債の元利払いなどを除く歳出を差し引いた収支)。

 利率と名目GDP成長率が等しければ、基礎的財政収支が均衡している限り、国債残高とGDPが同じ速度で増加するため、国債残高の対GDP比は変わらない。そして金利が一定なら、利払い額の対GDP比も変わらない。したがって、次のような法則が導かれる。

 政府債務残高の対GDP比は、

i<gなら低下する。
i=gなら一定となる。
i>gなら上昇する。

財務省中期試算の27年度見通しは
国債金利が名目成長率を上回る

 財務省の中期試算では、27年度の名目経済成長率を3.0%、10年国債金利を3.2%と置いている。その後も名目成長率3.0%に対して、10年金利は28年度3.4%、29年度3.6%という前提だ。つまり、金利が名目成長率を上回る。

 ここに、現在の日本財政が直面する問題の本質がある。

 これまでは巨額の財政赤字を続けても、日銀が長期金利を低く抑えていたため、そのコストが直ちに財政を圧迫することはなかった。しかし、その前提が崩れている。新しい政策を実施する場合にも、その財源だけではなく、過去に積み上げた債務の利払い増加を同時に考えなければならない。

 日本財政の最大の変化は、財政赤字が突然大きくなったことではない。1000兆円を超える債務を抱えながら、それを可能にしてきた「ほとんど金利を払わなくてもよい」という特殊な環境が終わりつつあることだ。

 これまで潜在的だった巨額債務の問題が、利払い費という現実の予算負担に顕在化し始めた。27年度予算は、この変化が誰の目にも見える形で現れる最初の予算になる。

(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)