例えば、男性の身長については、世間一般で170cmが「標準」、178cmが「好まれる身長」、180cm以上が「高身長」と見なされる。男性に限らず、女性にも一般的に理想とされる身長があり、160~170cmとされている。

 一部の特殊な職業では、採用時に身長の基準が設けられているのは当然とされている。しかし、中国では、営業職やサービス業など、人前に立ったり顧客と接したりする仕事でも、表向きには示されない暗黙の基準がある。

 本来なら、身長は仕事に関係ないはずなのに、第一印象で差がついてしまい、背の高い人が有利になることが多い。

 筆者が仕事で関わった上海のある政府機関には、身長192cmの局長がいた。彼が就任した当時、職員たちはなぜか誇らしげだった。「これだけ背の高いリーダーなら、他局との調整や交渉でも迫力がある」というのである。

 実際、その局長は在任中、それまで難航していた問題を解決し、改革も進め、大きな実績を残した。もちろん本人の能力によるものだろう。それでも局内では、なぜか「身長も一役買った」という伝説が残った。中国社会における身長への意識を象徴するような話である。

就職・結婚・子育て
高すぎる「身長の壁」

 身長の「スペック化」が仕事よりも顕著に表れるのは、恋愛やお見合いの場である。

「顔は普通でも180cmならプラス」「身長が低いなら、年収が相当に高くないとダメ」

 身長は相手選びの「必須条件」である。時には暗黙の「合格ライン」が設けられていることさえある。

 中国の「青年発展フォーラム」が国内大手婚活プラットフォームのデータをもとにまとめたレポートによると、女性の8割超が自分より背の高い男性を望み、自分より背の低い男性でも構わないと答えた女性はわずか3%未満にとどまる。さらに13%以上の女性が、男性に175cmを超える身長を求めている。男性も相手の身長を重視しており、ほとんどが158cm以上の女性を希望している。

 日本社会は、中国社会に比べると身長よりもその人の能力で人を判断重視する傾向があると感じている。特に女性の場合、むしろ小柄な人が「可愛い」とみられがちなのも中国と異なる。

 筆者の中国人の友人女性は身長170cmで、ルックスが良く、パッと見るとモデルのような人である。中国ではモテモテだったのに、日本に来ると、自分より背の低い男性が多く、かえって敬遠されるようになり、恋愛での立場ががらりと変わったと嘆いていた。