しかし、社長の反応は冷ややかでした。
「Hさん、そのシステム導入に数千万円かかるんでしょう?うちにそんな予算はありません。それに、うちは現場を見て判断してきたから、ここまでやってこられたんです」
3カ月目、Hさんの不満は爆発しました。
「なぜ理解してもらえないのか。これでは適切な経営判断ができない。数値で管理できないものは、管理できないのに」
現場の社員からは、「机上の空論だ」「実態を知らない」という声が上がり始めました。
6カ月目、Hさんは完全に孤立していました。社長が「まず現場を見てほしい」と言っても、Hさんは「まず数値を整備してからです」と譲りません。会議でのHさんの発言を、誰も真剣に聞かなくなりました。
そして1年後、Hさんは元の会社に戻ることになりました。出向先での実質的な成果はゼロ。最後まで「この会社は遅れている」と批判を続けていたそうです。
もう1人の元・管理本部長が
出向先で信頼を勝ち得た理由とは
私は、Hさんのような方には、出向前に必ずアドバイスをすることにしています。
「大企業と中堅企業では、最適解が違います。大企業では、規模が大きいからこそ精緻な管理が必要ですし、システムのバックアップやそのための人的リソースもあるから可能です。しかし中堅企業は、限られた経営資源の中で、スピードと柔軟性を重視します」
「管理会計は『手段』であって『目的』ではありません。本来の目的は『良い経営判断をすること』のはずです。完璧な数値がなくても、現場感覚と簡易的な管理で適切な判断ができるなら、それがその会社にとっての最適解なのです」
「最初の3カ月は、システムの提案は我慢してください。ひたすら現場を回り、なぜこのやり方でうまくいっているのかを理解してください。その上で、小さな改善から始めましょう。自分で作成したエクセルで簡易的な部門別管理をするとか、投資ゼロでできることから始めるのです」
実は、Hさんと同じような背景を持つJさんという方がいました。Jさんも大企業の管理本部長出身でしたが、中堅企業への転職に成功されました。







