幸い、私の手元にはこの取材のためにトレーラーのメーカーから取り寄せた三面図があり、実車による検証撮影の際にはデジカメを使って細部の写真も大量に撮ることができました。

「検証モデルを正確にするためには、この資料を基にして、トレーラーを自作するしかない」

 と思った私は、取材翌日には東急ハンズの木工フロアに足を運び、生まれて初めてのフルスクラッチビルド(プラモデルなどのキットを使わず、模型を完全自作すること――正確にはこの時は牽引車を市販品から改造しているのでセミスクラッチですが――)に挑むことにしたのです。

遺族の姿が頭を離れない
自作を決意した本当の理由

 トレーラーを自作するほど私がこの事件に入れ込んでいたのには、ある理由がありました。それは、この事故で息子さんを失ったご両親に初めてお会いした時に、「この事故の調査は、相手の言い分だけが通っていておかしい」と涙ながらに訴える姿が目に焼き付いていたためです。

 ご両親が我々に事故の説明をする際、状況を再現するために使っていたのは、実際の事故車両とは全く異なるチープな車のオモチャでした。トレーラーとワンボックスカーの縮尺も、ディテールも、実際の車両とは違います。それなのに何度もこのオモチャを使って事故の様子を説明したからか、ペイントは剥げてボロボロになっていました。

 この状況を自分なりになんとかできないか、と考えました。当然、死亡事故なので、模型製作に対して趣味的な考えは一切持ち込んではいけません。こちらとしては、ご両親が説明に使っていたオモチャの車の代わりに、精巧な模型を作って事故の検証をできたなら……という一心ですが、それは「親切の押し売り」ではないのか、という考えが何度も頭をよぎります。

 もしかしたら、息子さんの命を奪ったトレーラーの模型を作っても、かえって気分を害するだけではないのか……。様々な考えに逡巡しながら、「ご両親の許可が得られなかったら、撮影には使わない」と心に決めて、スクラッチビルドを開始しました。

 製作に当たっては、牽引車の方は先に作ったカートランスポーターの牽引車をベースに改造し、トレーラー部分は図面を作って木の板から完全自作することとしました。普通ならば模型作りは楽しい作業ですが、この時ばかりは背筋を伸ばして神妙な気持ちで、緊張しながら作業を進めたのを覚えています。