就業調整している短時間労働者の多くは
会社員や公務員に扶養される妻たち

 一方、いまだ「年収の壁」を超えないように就業調整している人もいる。その割合が高いのが、会社員や公務員などに扶養されている配偶者だ。

 前出の調査によると、就業調整している短時間労働者の割合は、国民年金加入者が31.6%なのに対して、会社員や公務員など被用者に扶養されている配偶者は2倍の64.9%となっている。

 会社員や公務員に扶養されている配偶者は、年収130万円未満(60歳以上、または障害年金受給者は180万円未満)なら保険料の負担なしで国民年金や健康保険からの給付を受けられる。これは国民年金の第3号被保険者、健康保険の被扶養者という制度で、被用者保険だけに設けられている「特権」といえる。

 配偶者の年収が130万円以上になると扶養から外れ、特権を使えなくなる。そのため、壁を超えないように就業調整しているのは被用者の配偶者が圧倒的に多いというわけだ。

 彼・彼女らは保険料なしで給付を受けられるものの、老後の年金は国民年金だけで、病気やケガをしたときの傷病手当金もない。賃金労働者として働いているのに、被用者本人に比べると給付は貧弱で、万一のリスクは高くなる。

 また、負担の公平性から見ても弊害が大きい。同じように年収の壁の範囲で働く短時間労働者でも、配偶者の職業が自営業の場合は被用者保険のような特権はないため、自分で保険料を支払って国民年金や国民健康保険に加入しなければならないからだ。

 労働時間や月額賃金が同じなのに、配偶者の職業によって保険料負担に差が出るのは不公平で、このままでは制度への信頼が損なわれる。

 国も、第3号被保険者や被扶養者の範囲縮小に向けた改正に乗り出しており、9月4日に厚生労働省で「国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会」の初会合が開かれた。検討会では、短時間労働者の働き控えの実態を調査し、26年度中に具体的な制度設計をまとめる予定だ。

 本人の働き方に忠実で、保険料負担の公平性を担保していくためには、第3号被保険者や被扶養者の見直しは急務だ。「社会保険適用ラインの労働時間を週5~10時間程度に拡大する」「第3号被保険者は段階的に廃止し、賃金労働者は全て被用者保険に加入」など大胆な見直しが必要になるだろう。