居眠り大株主が突然起床→「トンデモ提案」に一同あぜん【マンガ】『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第85回では、企業と地政学リスクについて解説する。

中国撤退か、さもなくば社長退陣か

「我が社にとって、最大の資産は、人。この人達が生き生きと働くことが、我が社の成長戦略です」

 新興の上場アパレル企業・T-BOXの代表である花岡拳は、同社を買収し、その手中に収めんとする外資系ファンド・サンデーキャピタルの福沢ウィリアム太郎との舌戦を繰り広げる中で、こう言い切る。

 T-BOXが自社の主張を伝え、サンデーキャピタルによる買収を阻止しようとしてあえて開催した臨時株主総会もいよいよ大詰め。株主としてT-BOXの内部留保を指摘した福沢に対して、花岡は内部留保はパートやアルバイトの社員採用などの原資とするとして反論する。

 ほかの株主たちは固唾をのんで両者を見守る。だが、多くの議決権を持ち、実質的に「最後の審判」たる大株主・塚原為ノ介は、話も聞かずに居眠りをしていた。そして突然目を覚ましたかと思えば、唐突にT-BOXの中国進出に反対。北米とヨーロッパへの進出を提案するのだった。

 本来ホワイトナイトとして花岡を守るべき立場である塚原が、T-BOXの戦略に反対意見を出したことに驚く花岡。一方、これを好機と捉えた福沢は塚原の意見に賛同。海外戦略を転換するか、さもなくば即刻花岡が退陣し、専務である大林隆二を社長に昇格させるように迫るのだった。

令和の海外進出では無視できない「地政学リスク」とは

漫画マネーの拳 10巻P99『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 塚原は花岡の中国進出を反対し、北米やヨーロッパへ向かうべきだと主張する。だが今の時代は、企業が海外進出先を「市場が大きいから」「成長しているから」という理由だけで簡単に選べなくなった。

 その理由のひとつが、ニュースでも頻繁に聞くようになった「地政学リスク」だ。

 地政学リスクとは、国家間の対立や戦争、政治的な緊張などによって、企業活動や経済に予期せぬ影響が及ぶ可能性のことを指す。

 分かりやすいところではロシアのウクライナ侵略のような事象だが、地政学リスクを引き起こすのは戦争そのものだけではない。関税の引き上げや輸出規制、投資規制、物流の混乱なども、海外で事業を展開する企業にとっては大きな問題となる。

 実際、日本貿易振興機構(JETRO)の2025年度調査では、回答した日本企業の72.1%が地政学リスクによる事業への影響、またはその懸念を認識している。中でも最も多く挙げられたのが「米中関係・米中対立」で68.3%。米国による追加関税を懸念する企業も半数を超えた。

 だからといって、中国から企業が一斉に撤退しているわけでもない。在中国の日系企業では、今後1~2年の事業を「拡大する」とした企業は21.3%と、調査開始以降で最低となるものの、前向きな声もあった。一方、「現状維持」は64.3%を占めた。

 巨大市場としての魅力を残す中国で事業を続けつつ、リスクにも備えなければならないという、企業の難しい判断が見えてくる。これからは、海外展開では、市場の大きさだけでなく、国と国との関係まで見ながら判断する必要があるということだ。

 塚原という後ろ盾を失った花岡。だが彼は、株主たちに改めて自らの「商売の鉄則」を語ろうとする。

漫画マネーの拳 10巻P100『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 10巻P101『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク