読者のみなさんは、大学病院って薬漬けとか、無駄な延命治療をしていると思っているかもしれないが、それはない。むしろ逆。DPC=診断群分類包括評価といって、入院患者の病名(たとえば胃がん)に応じてどんな治療をやろうとも1日あたりの医療費が定額で決まっている。そして入院日数が増えるとこの医療費は減額される。

 つまり、回転を早くした方が儲かるし、なるべく薬を使わない方が儲かる。この制度は、もちろん厚労省が医療費を削減したいために考えたものだ。したがって薬漬けもないし、延命治療もない。成人の診療科では、急性期の治療が終わったら、患者を地元の病院に戻す。だから、大人に関して言えば大学病院で患者が亡くなるということはまずない(小児外科疾患は特殊な病気のため地元病院というものが存在しないので最期まで診る)。

 外来患者に関しても、具合がよくなればどんどん紹介元のクリニックや病院に患者を戻している。現状、外来も大混雑で、患者からは待ち時間が長いというクレームを昔からずっと突きつけられている。この問題を解消するには、患者を地元に帰らせるしかないのだ。

 ではどうすればいいのか?空きベッドを無くすことである。

病院長の診療科のベッドが
ガラガラではシャレにならない

 20年前、千葉大病院のベッドはそれなりに埋まっていたが、ガラガラの病棟が2つあった。小児科と小児外科である。両者ともに緊急疾患を常に診るので、ベッドがいっぱいだと病院としての機能を果たせない。だからそれで許されていた。

 しかし、あるとき、小児科のK教授が病院長に就任して風向きが変わった。K先生は小児アレルギーの日本の第一人者で、しかし偉ぶらず気さくな人で医局員から人気があった。学究肌の教授でそれまでは小児科病棟の埋まり具合(=病床稼働率という)なんてまったく気にしていなかったはずだ。

 だが、病院長になるとそうはいかない。病院を率いている病院長のお膝元でベッドがガラガラなんて洒落にもならない。そこで小児科はどんどん患者を受け入れるように態度を変えた(それまでは開業医のぼくから見ると、大学病院はちょっとお高く止まっていた)。