ぼくが、大学病院へ月に1回、外来診療をやりに行くと、小児科の医局長が「ちょっとお願い」と話しかけてくる。

「どんな患者でも診ますからどんどん患者さんを紹介してください」

「ま、難しい患者さんがいれば送るけど」

「いやいや、全部診ます。中耳炎で抗生剤を飲もうとしない子がいますよね。そういう患者さんには点滴から抗生剤を入れますから、中耳炎でも送ってください」

「うーん、それは難しい。だって、家族に『薬が飲めないなら千葉大に入院しましょう』と説明した後で、千葉大に電話して満床だったらどうするの?ほかの病院は中耳炎で入院させてくれないよ。いったん、家族に入院が必要って説明したら、確実に千葉大が受け入れてくれないと」

「分かりました。じゃあ、毎日メールします。ベッドがどれだけ空いているかお知らせします」

 こうして、千葉大小児科から毎日、千葉市内の小児クリニックにメールが届くようになった。最初のうちは「7床空いています」「5床空いています」とかだったのが、1年、2年と経つうちにだんだん空きベッドがなくなり、現在では「空きはゼロです」というのがほぼ毎日になった。臨床も積極的にやるという姿勢を見せることで病床稼働率を上げたのだ。ちなみに急性中耳炎で患者を紹介したことは1回もない。

病床稼働率だけでは
本当の採算は分からない

 現在の病院長のもと、千葉大病院は全科で患者を積極的に受け入れている。2025年度の病床稼働率は病院全体で90%を達成したらしい。90%というのは体感として、常に満床という感じである。

 それでも病床稼働率が80~90%にとどまるのはやはり小児外科である。でもこれでいいのではないか。空きベッドがゼロになったら怖い。小児外科疾患というのは、命に関わる病気で、なおかつ一刻を争う。

 千葉大病院の全職員に対して病院長から毎朝メールが届く。