医師と患者写真はイメージです Photo:PIXTA

医師と患者の関係は、医学的知識や経験の量において、対等ではない。医師がたっぷり説明しても納得できない患者もいれば、与えられた情報が多すぎて困惑し何も決められない患者もいる。そんなときに、別の医師にセカンドオピニオンを求めることは、患者の当然の権利。だが、それを求められる側の事情は、あまり顧みられていない。※本稿は、松永正訓『開業医の正体 患者、看護師、お金のすべて』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです。

勤務医時代のセカンドオピニオン
「1回3万円」は大学の収入だった

 セカンドオピニオンという言葉を知らない患者はいないだろう。ところが、言葉を聞き知ってはいても、それが実はどういう医療形態のことを指し、値段がいくらになるのかを知っている人は少ないだろう。つまり、セカンドオピニオンという医療は誤解されていると思う。

 普段診療している中で、「先生のセカンドオピニオンを聞きたくて」と言って受診する患者家族がときどきいる。やはりぼくが小児外科医のせいか、千葉県こども病院や千葉大学病院で手術が決まっている患者の両親が、本当に手術が必要かどうかを悩んで、ぼくのところにやってくるケースだ。

 セカンドオピニオンとは、1番目の意見に対して2番目の医者が意見を述べることだ。原則、診断や治療はしない。あくまでも1番目の診断や治療方針に対して自分の考えを伝えるだけのものである。セカンドオピニオンは自由診療で、実は保険は適用されない。保険医療が想定している一般的な診療ではなく、その医師の技術と経験を求めて患者が意見を聞きに来るのだから保険は利かないのだ。

 ぼくが千葉大病院に在籍していた頃、病院の定めたセカンドオピニオンの料金は1回3万円だった。当時ぼくは何度かセカンドオピニオンに応じたが、この3万円は大学病院の収入だった。ん?ちょっとおかしくないですか?これはぼくの収入でしょう。

遠路はるばるやってきた
患者家族から大金は取れない

 クリニックを作ったときに、ぼくは大学病院時代にならってセカンドオピニオンの料金を30~60分で3万円と決めた。ただし、こんな田舎の開業医の所にセカンドオピニオンを求めて患者がやってくるとは全然思っていなかった。しかし実際はそうではなかった。東京から江戸川を越えて患者家族がお見えになるのは言うに及ばず、最も遠い所としては九州から患者がお見えになった。

 大学でやっていた診療の続きという面もあったと思うが、ぼくが開業して2年目に出した本(『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』中公文庫)の影響もあったと思う。また、ぼくがクリニックのホームページに、大学病院時代の小児がんの治療経験を詳しく書いたことも影響しているだろう。