狂乱の美容医療 膨張市場の「闇」と錬金術#11Photo:PIXTA

美容医療クリニックの多くは営利目的で運営されているが、医療法では医療機関の営利目的経営が禁止されている。この抜け道として使われてきたのが、業務委託や物品売買を担う「MS法人(メディカルサービス法人)スキーム」だ。だが、むき出しの営利追求がはこびる美容医療業界では、このスキームを悪用した脱税や模造品取引、さらに上場企業を巻き込んだマネーゲームや巨額損失が実際に起きている。特集『狂乱の美容医療 膨張市場の「闇」と錬金術』の#9では、大手クリニックの具体例から、複雑化する美容医療ビジネスの闇とゆがんだ構造を追う。(フリーライター 村上 力)

非営利という建前とカネもうけの本音
医療機関を支えるMS法人の仕組み

 美容医療クリニックの多くは、カネもうけを目的に開設されている。客観的なデータこそないものの、それは確かだ。しかし、美容医療クリニックを含む全ての医療機関に適用される医療法では、営利目的での医療機関運営が禁止されている。医療法人は配当金の支払いができず、残余財産は国や自治体に帰属すると定められており、「美容医療ビジネス」での資本余剰の追求はできないことになっている。

 そこで多くの美容クリニックでは、「MS法人」(メディカルサービス法人)を商流に介在させている。医療法人と取引先にMS法人を介在させ、納入価格に利益を上乗せしてMS法人での利益蓄積を図るのである。

 MS法人スキームは一般の医療機関で活用されてきた。ベテランの病院開業コンサルタントは「そもそも利益移転だけがMS法人スキームの目的ではない」と説明する。

 代表的な活用例が、医療施設の不動産を所有・管理する場合だ。家族経営の医療法人が不動産を保有していると、2007年以降に設立された持ち分のない医療法人では、その不動産は最終的に国や自治体に帰属することになり相続できない。「そこで不動産を会社(MS法人)名義にし、医療法人から賃料を納めてもらう形にすれば、相続時の手続きも容易になる。かつ適正な賃料の範囲であれば、親族に安定した収入を残すこともできる」(前出のコンサルタント)。

 さらに医療法人に比べて会社組織は意思決定が迅速かつ簡易だ。そのため医療機器や物品の取引、受付や経理など医療行為に関わらない部門の従業員の雇用をMS法人名義で行うことで、院長が診療に専念できる環境を整えるメリットもあるという。

 またSBCメディカルグループのように、グループの屋号や経営ノウハウをMS法人として医療法人に提供し、ロイヤルティーを得るという関係性もある。

 本来は節税や不動産管理、業務効率化のために活用されてきたMS法人スキーム。しかし利益至上主義の美容医療界では、この仕組みが脱税や危険なさや取りの「温床」へと変貌している。次ページでは、60億円もの申告漏れを指摘された東京美容外科、模造糸リフトで69億円の賠償命令が下った品川美容外科、そして上場企業を巻き込んだ異様なマネーゲームの実態を暴く。