優秀な人ほど、自分のミスや過ちを素直に認める

 一流のリーダーは腰を低くして情報を引き込みます。

 二流のリーダーほど偉そうに振る舞い、激しく叱責したり、自慢したり、ときにマウントを取ります。

 この二流タイプの人がいると、それが組織全体のノイズになります。そのノイズは、組織にとっての信号対雑音比(目標達成や成果に関連する重要情報と、不要な業務や雑音などの比率)を劣化させます。つまり、リーダーが「優秀なリーダー」という自分を演じ、それを維持する印象操作に、組織全体のエネルギーを費やしてしまうのです。

 リーダーは「有能で決断力のある自分」を演じ、部下はそのリーダーの見せかけの世界に合わせるために「優秀で従順な自分」を演じる。何層にも重なったその虚像が、本当の情報を完全に窒息させてしまうのです。

 ネットフリックスの共同創業者であるリード・ヘイスティングスもナデラと同じように謙虚さを持っていました。

 2011年、ネットフリックスはDVDの郵送レンタルと動画配信の料金プランを分け、両方を利用する顧客にとっては値上げとなる変更を行いました。さらに、DVD事業を「Qwikster」という別ブランドにし、ウェブサイトも分けるという方針を発表しました。

 この料金変更を中心にした方針の変更は、顧客の強い反発を招き、同年7~9月には米国内の会員数が約80万人減少しました。同社は10月に別ブランド化とサイト分離の計画を撤回しましたが、株価は同年7月の最高値から10月下旬までに約75%下落することになったのです。

 この一連の過程で、彼は市場のせいにせず、自らの判断ミスを公に認めました。

 ネットフリックスでは、意思決定を担う人が異論を積極的に集めることを「farming for dissent(反対意見の栽培)」と呼び、判断の質を高める実践として重視しています。完璧さを前提にしないシステムを作ったのです。

 こうして並べてみると、彼らの謙虚さは「生まれつきの控えめな性格」などではなく、「意図的なマネジメントツール」だとわかるはずです。まさに「戦略的な謙虚さ」を持ち合わせているのです。

ピョートル・フェリクス・グジバチ

連続起業家、投資家、経営コンサルタント、プロノイア・グループ株式会社 代表取締役、株式会社GA technologies 社外取締役

ポーランド生まれ。2000年に来日。モルガン・スタンレーを経て、Googleでアジア太平洋地域の人材開発と組織改革に携わる。2015年にプロノイア・グループを設立し、組織開発と経営者コーチングを行う。講演者としても、国内外の経営層やカンファレンスで基調講演を行っている。2016年に共同創業したモティファイでは人材育成プラットフォーム「Motify」を400社超に導入し、2019年に同事業を譲渡。組織の内側、経営者、取締役会という3つの立場から、日本の組織を見てきた。著書は『世界最高のチーム』『世界最高のコーチ』(ともに朝日新聞出版)、『心理的安全性 最強の教科書』(東洋経済新報社)、『NEW ELITE』(大和書房)など多数。本書が20冊目となる。エンジェル投資家としても活動するほか、東京・永田町のポーランド料理レストラン「Ani Mru Mru」のオーナーを務める。