記憶の整理を2経路にする
物事を文章だけで覚えようとすると、頭の中の手がかりが一列になりやすいのですが、言葉に加えて「図やイメージ」でも内容を整理すると、記憶の定着率が各段に上がります。これは、「二重符号化」という心理学のしくみで説明できます。
『頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』堀田秀吾 著、アスコム、税別1800円拡大画像表示
ウェスタン・オンタリオ大学のパイヴィオは、頭の中での情報の持ち方(表象)には言葉によるものとイメージによるものの2種類があり、それぞれ別のしくみとして働くと考えました。
つまり、同じ内容を「言葉」と「絵や心的イメージ」の2つで理解できると、思い出す入口が増えるということです。
実際にパイヴィオは、こんな比較をしています。単語を覚えるとき、ただ声に出して読み上げた場合と、その言葉が指すものを頭の中で絵にしてみた場合。あとで何も見ずに思い出してもらうと、絵にしたほうは、思い出せた数がおよそ2倍にのぼりました。
覚える情報を1つの通路だけでなく、2つの通路に通しておけばいいのです。
この考えを学習教材に広げたのが、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のメイヤーの「マルチメディア学習」の研究です。メイヤーは、説明を言葉だけで受けるより、言葉と図を対応させて受けたほうが、しくみの理解が深まり、応用問題に強くなることを明らかにしました。
言葉だけより言葉と図を組み合わせたほうが、比較したすべての転移課題の成績が高いという結果になったといいます。
出典:『頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』拡大画像表示
図解は理解を
圧縮するための道具
ここで大切なのは、図を足せばなんでもいいわけではないことです。飾りの絵ではなく、本文の内容と対応する説明図であり、図と文が頭の中で結びつくことが必要となります。
ケント州立大学のダンロスキーらのレビューでも、文章理解でイメージを使う工夫には多少の効果が見られていますが、絵を細かく描く作業そのものが重くなりすぎると、理解を助けるとは限りません。
図解は作品づくりではなく、理解を圧縮する道具だと考えるほうがうまくいくのです。
「図1枚+見出し3つ」の実践術
実践としておすすめなのは、1ページを「図1枚+見出し3つ」に圧縮する方法です。
たとえば生物なら、本文をそのまま写す代わりに、中心にしくみの図を1つ描き、周りに「何が起こるか」「なぜそうなるか」「どこが重要か」の3つの見出しを配置します。
そのあとで、ノートを見ながらではなく、口頭で30秒から1分ほど説明しましょう。図と見出しが説明の骨組みになるので、丸暗記よりも理解の抜け漏れに気づきやすくなります。
図は上手でなくて構いません。矢印、箱、簡単な配置だけでじゅうぶんです。
大事なのは、情報を減らし、対応関係を見えるかたちにすることです。
出典:『頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』拡大画像表示
・内容を「言葉」と「絵や心的イメージ」の2つで理解できると思い出す入口が増えるので、記憶の定着率が各段に上がる。
・手書きのよさは情報を自分の言葉で整理できることにあり、要点を選び、言い換え、関係をつなぐ作業が理解を深める。
・Mueller, P. A., & Oppenheimer, D. M. (2014). The pen is mightier than the keyboard:Advantages of longhand over laptop note taking. Psychological Science, 25(6),1159–1168.
・Paivio, A. (1991). Dual coding theory: Retrospect and current status. Canadian Journal of Psychology, 45(3), 255–287.
・Mayer, R. E. (2009). Multimedia learning (2nd ed.). Cambridge University Press.0
・Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013).Improving students' learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.







