そもそも舐められることは本当に悪なのか?

 ここで、もうひとつ考えたいことがあります。

 それが、「そもそも、『舐められること』は本当に悪いことなのか」です。
 もちろん、軽く見られたり、不当な扱いを受けたり、人格を軽視されたりすることは問題でしょう。しかし、「相手から実力を過小評価されること」そのものは、必ずしもマイナスではありません。

 日本には、「能ある鷹は爪を隠す」ということわざがあります。
 これは戦略的謙虚さを言い表した言葉かもしれません。
 本当に実力のある人ほど、必要以上に実績や学歴を誇示して、自分を大きく見せようとはしません。そのほうが、相手に警戒されず、余計な対立も生まれにくくなるからです。嫉妬されたり、足を引っ張られたりすることは、継続的に発生する大きなコストです。一見地味ながらも、積もり積もれば大きな障害になります。

 であれば、過小評価され、期待されないくらいのほうがより成果を出しやすかったりします。実際、スポーツでもビジネスでも、相手に過小評価されることは、時として大きなアドバンテージになります。

 本当に警戒すべきなのは、「実力を低く見積もられる」ことではなく、「実力そのものがない」こと。
 仕事を前に進める実力、能力がなければ、強く見せていてもいずれ見抜かれます。
 一方、実力がある人は、必要な場面では結果で示せます。
 だからこそ、日頃は無理に自分を大きく見せる必要がないのです。

 戦略的謙虚さは、相手への敬意を保ったまま、自分の基準だけは手放さないこと。
 仮に頭を下げても、あなたの判断まで差し出す必要はないのです。

ピョートル・フェリクス・グジバチ

連続起業家、投資家、経営コンサルタント、プロノイア・グループ株式会社 代表取締役、株式会社GA technologies 社外取締役

ポーランド生まれ。2000年に来日。モルガン・スタンレーを経て、Googleでアジア太平洋地域の人材開発と組織改革に携わる。2015年にプロノイア・グループを設立し、組織開発と経営者コーチングを行う。講演者としても、国内外の経営層やカンファレンスで基調講演を行っている。2016年に共同創業したモティファイでは人材育成プラットフォーム「Motify」を400社超に導入し、2019年に同事業を譲渡。組織の内側、経営者、取締役会という3つの立場から、日本の組織を見てきた。著書は『世界最高のチーム』『世界最高のコーチ』(ともに朝日新聞出版)、『心理的安全性 最強の教科書』(東洋経済新報社)、『NEW ELITE』(大和書房)など多数。本書が20冊目となる。エンジェル投資家としても活動するほか、東京・永田町のポーランド料理レストラン「Ani Mru Mru」のオーナーを務める。