走行距離が増えた日に調査を決行
尾行調査の最大の敵とは?

 健一さんにお願いしたのは、2週間だけ、毎朝と毎晩の走行距離を手帳に書き写すことでした。自分の家の車の数字を読むだけですから、誰のものを盗み見るわけでもありません。

 沙織さんは普段「車を使うのは近所のスーパーと娘の送迎くらい」と話していました。その範囲なら、1日に走るのは長くても10キロ前後です。

 ところが水曜日だけ、1日で48キロ増えていました。翌週の水曜日も、ほぼ同じ数字でした。片道24キロは隣の市までの距離でした。

 調査日は、水曜日に決まりました。

 その日の午前、沙織さんは娘を学校へ送り出し、昼過ぎに家を出ました。私とパートナーは慎重に車両での尾行を開始しました。

 40分ほど走って、沙織さんの車は隣の市にある施設の駐車場に入りました。

妻の浮気はなぜバレた?尾行もドラレコも証拠なし…探偵が見抜いた「48キロ」の“痕跡”警戒心が強い人が移動手段を途中で変えるワケ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 沙織さんは10分たっても車から降りません。不貞の確率が高まってきた気がしました。さらに5分ほどして1台のバイクが沙織さんの車の前に止まりました。ヘルメットのシールドを上げたのは40代くらいの男性でした。

 2人は短く言葉を交わすと、沙織さんの車を駐車場に残し、沙織さんは男性から渡されたヘルメットをかぶって、バイクの後ろに乗りました。

 これは、警戒している人によく見られる動きです。別々に来て、片方の乗り物に乗り換える。一方の車が駐車場に残っていれば、2人がどこへ移動したのかは分かりにくくなります。

 バイクが出てきた時点でまずいと思いました。車での尾行にとって、最大の敵はバイクです。

 バイクは車の間をすり抜けていきます。渋滞の列も、信号待ちの列も、こちらが止まっている間に前へ抜けていく。車で追う側は同じ道を走れません。

 緊張感が爆上がりしました。なんとか食らいついていくしかない! 無我夢中で追いかけました。