管理会社に撤退されないために
理事会が今すぐ見直すべき3つのこと
これだけの手間と実務リスクを伴う以上、撤退されてから慌てるのではなく、そもそも契約を打ち切られない関係を維持するほうが、組合にとってはるかに合理的だ。組合員への対応負担を管理会社任せにせず、現場を孤立させないために、理事会はどう向き合うべきか。現場の事例をもとに、3つの対応策を共有しておきたい。
(1)文書でのやり取りをやめ、直接対話の場を設ける
強い主張を持つ人ほど、長文の文書を重ねてくる傾向にある。書面での回答では応酬が続くだけで、本意が伝わらないまま時間だけが過ぎていくパターンも多い。複数の役員と管理会社の双方が同席する場をつくり、直接意見を交わすことをおすすめしたい。
(2)意見書の取り扱い基準を定めておく
業務への過度な口出しや根拠のない批判は、管理会社との関係を悪化させる要因になる。理事経験者などであっても例外ではない。理事会として意見書の取り扱いルールを明文化しておく方法がある。「正当な理由のない意見書には対応しない」「誹謗中傷を含む書面は差し戻す」といった受付基準を明確にしておくことで、管理会社のスタッフに過度な負担が集中するのを防ぐことができる。
(3)第三者の介入を検討する
当事者間での解決が難しい場合は、マンション管理士や弁護士など外部の専門家に経緯を整理してもらい、間に入ってもらう選択肢もある。一定の費用は生じるが、問題を放置して管理会社に撤退されるリスクを考えれば、検討する価値は十分にある。客観的な第三者が入ることで、感情的なもつれを事実関係の整理へと引き戻す効果も期待できる。
管理組合と管理会社は、マンションの適正な維持管理を支えるパートナーである。委託費や工事費の交渉などで利害が対立する場面はあっても、「同じ方向を向いた関係である」との前提を管理組合全体で共有しておくことが、撤退を防ぐ最も確実な備えになるはずだ。
管理会社の撤退は「ある日突然」やってくるように見える。だが実際には、長い時間をかけて現場の負担が積み重なった結末にすぎない。「お金さえ払っていれば大丈夫」という前提は崩れ、組合側の人的な対応力が管理の質を左右する局面に入っている。
委託先を変えたところで、問題そのものが解消されるわけではない。「なぜ契約終了に至ったのか」を直視しないまま次の管理会社を探しても、同じトラブルを繰り返す結果にしかならないからだ。契約を打ち切られる前に、まずは日頃から現場の担当者とどのような関係を築けているか、いま一度冷静に振り返ってみてほい。
(株式会社さくら事務所創業者・不動産コンサルタント 長嶋 修)
さくら事務所公式サイト
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