米国民の間で最も議論を呼んだと思われる(詳細は後述)のが、「締めのひとこと」です。
The power of veto is impervious.
(拒否権は何にも侵されない)
imperviousは本来、「水を通さない」のように物質に使う語で、「びくともしない」という強い断定です。
なぜトランプ氏は歴史的大敗を喫したのにもかかわらず、強気なのかというと、この現実問題があります。民主党が議会で過半数を獲得しても、大統領の拒否権を覆すには上下両院で各3分の2以上の賛成が必要で、民主党単独ではその議席数に届かないのです。
専門家らは、トランプ氏がこの拒否権をテコにして、さまざまな「取引(ディール)」に使う狙いがあるのではないかと分析しています。
トランプ「負け惜しみ」発言に
米国民の反響は?長文の怒りコメントも...
では、これらのトランプ発言に対して米国民の反響を見てみましょう。主に、政治系メディアサイトの読者投稿コメントから、英語のニュアンスや感情を分析してみます。筆者がざっと見たところ、保守寄りの読者が多いメディアサイトでさえ、コメント欄はトランプ批判が多数を占めました。
まず、他の読者から「イイね」を最も多く集めていたのはこの投稿コメントです。
excellent. start by vetoing the Iran war. just declare victory, again, and come home.
(結構。まずイラン戦争に拒否権を使え。もう一度「勝利宣言」して帰ってこい)
ベトナム戦争期にアメリカ側の戦略が語源となった英語の慣用句に、declare victory and go home、「勝ったことにして撤退する」というものがあります。このコメントは、まさにそれです。しかも、againの一語を挟んでいることで、過去にも同様の事態を繰り返したことへの国民感情がにじみ出ています。
続いて、同じくらい多くの支持を得た投稿コメント。
If he is smart, he would veto his tariffs. That would immediately lower prices and help everyone.
(もし彼が賢ければ、自分の関税に拒否権を使うはずだ。そうすればすぐ物価が下がり、皆が助かる)
これは、米国民が苦しむ物価高やトランプ関税の影響について、早期解決を望んでいる声です。
さらに、国民感情を映しているなと思ったのは、もはや罵倒するような長文にあった次の一節です。
You promised $2 gas. You promised tariffs would not be inflationary, and that was a lie, too.
(おまえはガソリン1ガロン2ドルを約束した。関税はインフレを起こさないと約束した。それもウソだった)
長文からは怒りを感じます。トランプ氏自身も番組内で敗因について「I think it's the gasoline price.」(ガソリン価格だと思う)と述べており、この点は反省しているようです。
では最後に、大統領拒否権は本当に impervious、「何にも侵されない」のか、確認してみましょう。
11月6日時点の最新報道によると、野党・民主党が上下両院で過半数を奪還しましたが、大統領の拒否権に対抗できる3分の2の議席には、やはり届かない見通しであるようです。
ただしそれは、与党・共和党議員が「造反しない限り」ですが.……!
また、別の問いも浮かびます。国民の不満は、ガソリン価格や関税、物価高、イラン戦争でした。これらはいずれもトランプ大統領自身の政策です。
大統領拒否権を使えば民主党の法案を止めることはできても、物価高や戦争を解決できるわけではありません。トランプ大統領は残り2年、任期があります。彼の政治家としての評価は、自身の政策の結果であるインフレ対策をもってして判断されるのではないでしょうか。








