私はよく雑誌の取材を受けるが、事前に筆者のことをよく調べてくる人と、まったく何も調べてこない人がいる。当然、こちらが気持ちよく話すのは、きちんと事前準備している人に対してだ。
「先生は、どんな本をお書きになってるんですか?」
などと平気な顔で質問してくる人がいる。どんな内容の本を書いているかくらいはすぐに調べられるはずなのに、それをしないで本人に聞いてくる気持ちがよくわからない。筆者もとたんに不機嫌になって、口が重くなってしまう。ネット書店において、「内藤誼人」と検索すれば、本のタイトルくらいは、簡単に調べられるのに、それをしていないのである。
「先生は、どちらの大学で学んだのですか?」
と質問してくる人もいる。そんなことは、筆者の本を一冊でも買って、奥付にある「著者紹介」を読めば、すぐにわかることだ。そんなことを、出会った本人に聞くのは、どういう神経をしているのか。
初対面の相手の
情報収集をおこたるな
その点、きちんと事前情報を仕入れてくれる人は、大変に気持ちがいい。筆者の趣味はとても広いので、ビジネス以外の本もけっこう執筆している。
そういう本までも読んでおり、「内藤先生は、ああいう本もお書きになれるんですね」と持ち上げられたりすると、とても気持ちよく話すことができる。人間の精神構造というのは、かなり単純なのだ。
初対面の相手に対しては、何より事前情報がモノをいう。
とにかく相手あってのビジネスなのだから、調べられることは何でも調べておこう。会社の職員録や人事興信録などが役に立つ。またインターネットという便利なものがあり、相手がホームページを開いているのなら、それによっても深いレベルまで知ることができよう。
司馬法という兵法書には、「敵がまだ遠くにいるときは、じっくり観察せよ。そうすれば敵が恐ろしくなくなるだろう。敵が近づいたら、むしろあれこれ詮索しないことだ。そのほうが迷わない」という言葉がある(遠きは、これを視ればすなわち畏れず、近きは視るなければ、すなわち散ぜず)。