日本銀行は素晴らしいリサーチスタッフを抱え、総裁は聡明であり、とてもプロフェッショナルな組織だが、ことインフレについてはスタンスを改めるべきだと思う。いまや、米国のFRB(連邦準備制度理事会)の中からでさえ、3~4%のインフレを目指すべきとの声が聞かれる。日本も、インフレターゲットでも、日本流のオリジナルバージョンでもいいから、早く発想を切り替えるべきだろう。

―債務負担圧縮の視点はさておき、成長戦略の面ではアドバイスはないか。

 まず、日本経済がなぜ今のような停滞に陥ったのか、もう一度きちんと考えるところから始めるべきだろう。金融危機のせいにするのは簡単だが、それは間違いだ。

 私は、大きな原因のひとつは、中国の成長をうまく生かせなかった点にあると思う。それどころか、中国の台頭で、世界経済における日本のグラビティ(引力)が下がってしまった。要するに、新たに中国を中心に加えて回りだした世界経済において、日本は敗者となってしまっているのである。

 むろん、人口減少問題を解決すること。これは何にもまして喫緊の課題だ。アウトサイダーの私が言うのもなんだが、女性が子供を産みたくなるような、そして移民が受け入れられ、定住したくなるような社会づくりを急がなければならない。政府はそのために何をすべきかもっと想像力を働かせるべきだし、国民も、たとえば移民問題について、どこまでが許容でき、どこからが無理なのか、もっと突っ込んで議論すべきだろう。ただ、同時に、中国の経済成長からもっとポジティブなベネフィットが得られるように、とにかく知恵を働かせなければならない。

 アジア通貨統合に向けて中国と共同でイニシアティブを取るのも一計だろう。独仏が第二次大戦後の欧州経済統合に向けた取り組みから得た成果は計り知れないほど大きい。日中が同じことを目指せるならば、政治的にも大きな前進となるし、両国の経済関係は劇的に深化する。グローバルインバランス解消にも貢献しうる。

 日本に限ったことではないが、低所得者層に金をバラまくだけではない、こうした発想をアクションに結びつけて初めて、「今回は違う」という主張にも説得力が宿るのではないか。