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国内発売予定がない「ニンテンドー2DS」は
任天堂海外市場の救世主になる!?

石島照代 [ジャーナリスト],小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]
【第40回】 2013年9月3日
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 元々、任天堂は子ども向け・ファミリー向けのコンテンツに定評がある企業であり、ハイティーンやそれ以上の年齢層が好むFPS(欧米で人気が高い一人称視点のシューティングゲーム)などは決して得意ではなかった。今回の決定は、まさにハイティーンやそれ以上の年齢層がメインターゲットであるスマホ市場での消耗戦を避け、自分たちの得意な子ども向け玩具市場に「籠城」することを示している。それは、子どもという基礎需要を持っているのが任天堂だけだからである。

 任天堂は、少なくとも今後数年は、子どもをメインターゲットとした玩具市場に籠城を続けるのは間違いないだろう。子どもにスマートフォンで自由にオンライン決済させることに抵抗がある家庭は日米問わず多いため、そういった層を取り込む余地はあるし、スマートフォンでのゲームの操作性の悪さを考えると、コントローラーとボタンがついているゲーム専用ハードが生き残る余地は十分ある。

 ただ、任天堂は日本では2DSを発売しない予定というが、筆者ら(石島、小山)はこの判断には疑問が残る。というのは日本でも、安くて子どもの目にも安心な2DSをポケモン専用機として子どもに与えたい親はいるはずで、商機逸失の点からも日本市場で現行機のみにこだわる理由はよくわからない(ついでに言えば、筆者らも2DSが欲しいが、日本で買えないのは大変残念である)。

 しかし、問題は「(現状では出せるかどうか不明だが)その次の携帯ハードの性能ラインをどこに置くのか」である。3DSは性能面でスマートフォンに簡単には負けないよう、過去の任天堂の携帯ハードとしては最も高い249ドル(日本では2万5000円)で発売したが、すぐに値下げに追い込まれた経緯がある。次のハードは、現行の3DS(169.99ドル)か今回の2DS(120ドル)程度の価格で販売を開始しないと、市場で完全に淘汰される可能性がある。販売価格で部品原価の天井がある程度決まってしまうため、性能的にはかなり苦しいのではないか。

 任天堂はソニーやマイクロソフトが進めた「ゲームハードの高性能化を突き詰める」という路線を避け、玩具屋として「新しい面白さ」を目指すことで、Wii、DSでは大成功を収めた。

 しかし、WiiUは昨年11月~今年6月末までの全世界での販売台数が361万台と大苦戦しており、 9月20日から50ドル値下げして299.99ドルにすることが、2DS発売のニュースと同時に発表されている。年末にはソニーとマイクロソフトの新ハードの発売も控えており、今後の展開によっては、さらなるテコ入れ(値下げもしくは廉価版新ハードの投入)を迫られる可能性がある。

 2DSでは、3DSのアイデンティティともいえる立体視機能をカットするという決断を下した。次のハードも性能面でかなり劣位になることが予想されるため、「新しい面白さ」を生み出すためのイノベーションを新ハードに盛り込めるかに、任天堂の将来がかかってくるだろう。

(ゲームソフトの販売本数は、「ポケモン不思議のダンジョン マグナゲートと∞迷宮」のみ株式会社ポケモン調べ、他はすべて「2013CESAゲーム白書」〈コンピュータエンターテインメント協会刊〉から引用した。市場から見た施策解説は石島が、ハード開発視点からの解説は小山が主に担当した)

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

小山友介
[芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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