1996年に第1作が発売されて以降、全世界でシリーズ累計約1億5000万本以上が売れた「ポケットモンスター」(ポケモン)シリーズ。第1作発売から13年以上経った今でも人気は衰えず、昨年9月に発売された完全新作「ポケットモンスター ブラック・ホワイト」は、販売本数がすでに470万本を超えた。ポケモン関連事業を統括する任天堂の関連会社、ポケモンの石原恒和社長に世界で愛され続けるビジネスモデルの秘密を聞いた。

筆者(石島):ゲーム業界の企業によるゲームソフト製作関連以外の活動、なかでも社会貢献の話はあまり聞くことがありません。そんな中、ポケモンでは2007年から幼稚園児を対象とした生活マナー学習プログラム「ポケモンスマイルスクール」を無償で提供するなど、社会に根ざした活動をしているそうですね。まずは、この活動を始めた理由を教えてください。

いしはら・つねかず/1957年三重県生まれ。筑波大学大学院芸術学研究科修了。1995年、ポケモン開発関連会社である、株式会社クリーチャーズを設立、初代社長に就任。2000年ポケモン設立と同時に現職。

石原:「ポケモンカードゲーム」を遊んでいるお子さんたちが、たし算や引き算をすごく早く覚えているとたくさん聞いたことがきっかけです。子どもは夢中になる中身があれば、学校の勉強だということとは別個に遊びの中で、ものすごい効率と吸収力でものを覚えてしまうらしい。それならば、「ポケモン」が教育の補助アイテムとして役に立つことで、親御さんにとっても「ポケモン」がいい道具になるのではと思いました。

 「ポケモンスマイルスクール」(下の写真)は、まだひらがなやカタカナを覚えるという段階の一歩手前で、テレビアニメを通してポケモンを知っている幼稚園の年中さんや年長さんに教えることはなんだろうと考えたことがきっかけです。

  子どもに接して一番感じていたのが、「挨拶をする」とか「歯を磨こう」とか、そういった生活習慣の重要性でした。ひょっとしたら、そういう大切なこともポケモンを通じて教えることができるかもしれない、と思ってやってみたのが「ポケモンスマイルスクール」なんですね。