日本最大級のコワーキングスペースを設立・運営する傍ら、年200回を超えるイベントで全国の起業家たちの背中を押す。そして数字よりも人物を見て現在までに60社に投資。うち複数がイグジットしただけでなく、未だに倒産はゼロ――。
その実績から2010年代の起業ブームの中心人物と目されるインキュベーターが、「いま、この日本での」起業のリアルを解説する連載の最終回は、急増したベンチャー投資家の存在と、それによる起業家たちの意識・行動の変化をまとめます。
急増したシード段階へのベンチャー投資
前回解説した、バイアウトという道がひらけたことだけが理由ではないでしょうが、シード段階のベンチャーに500万円ほどの少額投資をするVCや企業は、ここ3年ほどで約10倍に増え、約20社ほどとなりました。2008年のサムライインキュベート設立時にはほとんどそういったVCや企業はありませんでしたので、「大きな変化」だということはわかってもらえると思います。2013年7月現在の、日本の主なベンチャー投資家を表にまとめてておきましょう。
なお、バイアウトが日本で普及したのは、アメリカの起業家やシリコンバレーの情報が多くなってくるにつれて、企業買収についてのイメージが変わってきたことも大きいでしょう。
正直に言うと、僕がバイアウトに肯定的になったのも、ほんの4年前、シリコンバレーに行ったときです。それまでは、どちらかというと「創業者は最後まで自分の会社に責任をもつべきだ」「自分で起こした会社を売るなんてサムライではない」と思っていました。
ところがアメリカの起業家は、のんびりとリタイアするのではなく、バイアウトで得たお金で次世代の起業家の支援を行なっていたのです。成功した起業家がお金だけでなく知恵や経験を次の世代につなぐ。企業のステージに応じた役割分担ができており、これは本当にすごいしくみだと思いました。