ベンチャーを買ってくれる大企業も増加中

 バイアウトというからには、ベンチャーを買ってくれる会社が必要です。マーケットとして成り立つには、その数も重要になってきます。数年前までは、ベンチャーをバイアウトする会社は本当に限られていました。Yahoo!と楽天くらいだったと思います。

 しかし現在は、Yahoo!、楽天に次いで、エヌ・ティ・ティ・ドコモ、KDDI、ソフトバンク、DeNA、GREEなど、ベンチャーの買収を積極的に検討する企業がずいぶん増え、僕のところへの問合せの増加からも、日々それを実感しています。

 経営企画や新規事業開発、M&Aを担当される方とお付き合いをしていると、大企業のなかにも「既存のやり方じゃだめなんですよ!」「革命を起こしましょう!」という元気のいい人が増えてきたように感じます。

起業家のEXIT戦略も変化した

 こうした状況の変化は、起業家の意識や戦略にも影響を与えています。

 最近、多くの起業家は最初から明確に大手企業からのバイアウトを狙っていて、本当にわかりやすく言うと、たとえばこんなシナリオを考えています。

iPhoneやアンドロイドアプリに特化したベンチャーをつくり、低コストで運営する。
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Apple Store、アンドロイドマーケット、Facebookなどプラットフォームなどで実績を積む。
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先行する大企業や大手ベンチャーが乗り遅れている分野(スマートフォンアプリ、Facebook、Twitterを活用したソーシャルサービスなど)を絞り込み、サービスをつくり、実績を出してバイアウトする。

 サムライ軍団のなかでは、ノボットの小林清剛さんがこうしたプランで成功しました。

 ノボットが創業したのは2009年4月のことです。iPhoneの登場で一気に火がついたスマートフォンブームに乗じ、スマートフォンに広告を配信するサービスを開始しました。そのわずか2年半後、KDDIの子会社であるMedibaに15億円で買収されました。売上規模が月1億円にまで成長していましたが、当初からの計画通りのバイアウトでした。

 また、そもそも最初から、特定の大手企業が弱みとしている領域をターゲットにして、会社を設立するという方法もあります。インキュベーターやVC、起業家が、Google、Facebook、Twitter、Amazonなどを分析し、競合に比べて弱い領域を見つけます。そこを補完できそうなベンチャーに投資・設立し、ある程度成長したらバイアウトをもちかけるということです。シリコンバレーではよくある話ですが、日本でもこれから確実に出てくるパターンでしょう。