IPOとバイアウトのどちらを選ぶべきか

 バイアウトの話ばかりしてしまいましたが、ベンチャーにとってIPOという選択肢がなくなったのかといえば、そうではありません。

 IPOを目指すか、バイアウトをねらうかは、自分がどういう企業をつくりたいかによって選ぶべきです。サムライ軍団のなかでは、ソーシャルリクルーティングがIPOを目指しています。社長の春日博文さんが、「歴史に名を刻む会社がつくりたい」と真剣に考えているからです。

 IPOをしないと達成できない企業ミッションをもつ場合も、IPOを選択することになります。アイアンドシー・クルーズという会社は、「グリーンテクノロジーで世界を変える」という想いのもと、太陽光発電の施工会社選び・見積もり相談のサイトである「グリーンエネルギーナビ」を運営しています。この想いを達成させるのであれば、IPOを選択することになるでしょう。

 別の考え方として、3年後も自分が社長でいたほうが事業が伸びると思うならIPOを目指し、そうでなければバイアウトを狙うという選択もあります。

 経営者にはいろいろなタイプがいます。0から1を生み出すのが得意な人。1を100にするのが得意な人。アメリカでは企業のステージに応じた役割分担ができています。でも日本では、0から1を生み出すのが得意な起業家が、企業が成長ステージに入ったのに会社から離れられず、強みを発揮できないケースがよくあります。0から1が得意なのであれば、1をつくったらバイアウトして1を100にする人に継承し、また0から1をつくるほうが社会に貢献できるのではないでしょうか。

買収された先で踏ん張るという第三の道

 IPOとバイアウトだけでない、起業家の第三の道も紹介しましょう。それは、買収された先でも主要メンバーとなり、経営者として活躍する道です。

 私が営業統括として参画していたアクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)の社長だった宇佐美進典さんは、同社がサイバーエージェントに買収された後、サイバーエージェントグループの一員として残る道を選びました。そして、サイバーエージェントの長所を学びなら組織を大きく成長させました。

 宇佐美さんはサイバーエージェントのなかでも頭角を現し、役員としても活躍。その後、MBO(経営陣による企業買収)によってVOYAGE GROUPを再度独立させ、現在はIPOを目指しています。

 ほとんどの経営者は、自分の会社が買収されたら数年で辞めてしまう傾向があります。ただ、宇佐美さんの事例をはじめ、現在のYahoo!の経営陣のように、買収された先で大きく飛躍している人もいます。

 サイバーエージェントも、子会社に任せる経営をしているので、宇佐美さんも力を発揮できたのだと思います。若い経営者が若い経営者を買収するとうまくいくのかもしれません。旧い体制の中に組み込まれていくと大変です。