■思いを伝えたクロージング
 久子さまは、スピーチの最後の部分で、「もしかすると、この特別な時間を皆さんと共有することができたことによって、将来、私を大きく捉えたオリンピック・ファミリーの名誉的メンバーとしてお考えいただけることがあるかもしれません」との言葉を添えました。

 何を意味するのか、ストレートにはわかりにくい内容ですが、あえて抽象的な表現を用いながら、東京での五輪開催の願いをほのめかしているとも感じられます。含意法というレトリックで、恋心を遠回しな表現でほのめかす、和歌の世界にも通じる技巧が凝らされているように思われます。

 そして、大変な努力をしてきたTEAM JAPANのプレゼンテーションをしっかり受け止めてほしいとの願いを伝え、今回の機会に対する感謝の気持ちを伝えました。

 久子さまは最後に、「Merci à tous.(ここにいるすべての皆様に感謝します)」というフランス語を用い、さりげなく、それでいて引き締まった強い言葉でスピーチを締めくくったのが印象的でした。

おわりに

 ビジネス・パーソンにとって、特に海外で活躍する際には、カジュアルなパーティーから公式の式典まで、様々な場でスピーチをする機会があることと思います。グローバル・ビジネスリーダーを目指す人にとって、伝統的なスピーチの技術は必須のスキルです。

 久子さまは、皇族としての立場上の制約がなければ、よりストレートな表現で思いを伝えられたことでしょう。しかし、ビジネス・パーソンにとっても同様の立場におかれることがあるかもしれません。そのような視点からも、久子さまのスピーチは、究極のお手本となるものと言えるでしょう。

久子さまのIOC総会スピーチ・ビデオ: http://www.youtube.com/watch?v=qJigaI3BJhQ
久子さまのIOC総会スピーチ全文:http://www.asahi.com/national/update/0911/TKY201309110577.html
 


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