ブルーレイ・ディスク(BD)の勝利に終わった次世代DVDの規格戦争。HD DVDを推す東芝の突然の撤退表明で、思わぬとばっちりを受けたメーカーがいる。BDとHD DVD両規格互換機に注力していた韓国のLG電子とサムスン電子である。
特に両規格互換機に特化してきたLGは、この春にも第三世代の新製品を投入する予定だったが、急きょ取りやめとなった模様だ。東芝の撤退表明を受けて、同社はすでにBDの製品化の検討に入っているが、「2008年内に1機種でも出せればいいほう」(鈴木泰智・テクノ・システム・リサーチ研究員)と見られている
。
サムスンは、基本的にBD陣営なのだが、規格争いが当分続くと踏んで、昨年後半から両規格互換機にも注力し始めた矢先だった。
さらに、LGに両規格対応の光学ピックアップ(ディスクの信号を読み取る部品)を供給している日立メディアエレクトロニクスなど、影響は関連する部材メーカーにも及んでいる。
勝者の鼻息は荒い。2008年の次世代DVDプレーヤー・レコーダーの市場規模はもともと500万台程度と予測されていたが、「東芝の撤退で200万台は上乗せになる」(島津彰・ソニーBD戦略室長)。規格統一で消費者の買い控えが解消されることに加え、HD DVDからの買い替え需要も見込む。さらに、「HD DVDのオーサリングシステム(ソフト制作設備)からBDのシステムへの置き換えが始まっている」(島津室長)ため、今後はBDのソフトが続々と出てくる。光ディスク製造メーカーもBDの本格生産に動き始めた。
追い風が吹くBD陣営だが、こちらも順風満帆とはいえない。部材メーカーが急激な市場拡大に対応できない可能性があるからだ。これまでの規格争いがアダとなって、参入する部材メーカーが非常に限られており、裾野はまだ狭い。たとえば、BDのピックアップ用レンズで9割近いシェアを持つコニカミノルタオプトは、「供給がかなりタイトになっている」(業界関係者)。市場が期待どおり拡大するかどうかは不透明だ。
勝者にとっても敗者にとっても、不毛な規格戦争の爪跡は大きい。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田剛)