言うまでもなくアベノミクスが順調に展開するためには、経済界の果たす役割が決定的に重要である。
経済界が政策要求するばかりで、自らリスクを引き受けたり、身を切るような協力を避けようとすれば、アベノミクスの成功はまずあり得ない。
“異次元の”金融緩和政策と財政政策が発動され、一定の「経済状況の好転」が実現された今、ボールは経済界に渡っている。経済界が“異次元の”ボールを力一杯投げる番である。
法人税減税の腹を固めた
安倍首相のホンネとは
政府は、経済界に早くボールを投げるように促すためか、9月20日首相官邸で政府、経済界、労働界の代表による「政労使会議」の初会合を開いた。
その席で安倍晋三首相は「経済がプラスに反転する動きが出ている。企業収益、賃金、雇用の拡大を伴う好循環につなげられるかどうか勝負どころだ」と強調して協力を求めた。
安倍首相のホンネを端的に言えば、政府の努力で経済状況が好転したのだから、それによって増えた企業の利益は、内部留保や海外投資より、①国内設備投資、②賃上げ、③雇用の拡大にまわせということだろう。至極当然の主張である。
さらに、最近になって安倍首相は、消費税増税と並行して企業減税を実現する腹を固めたようである。
まず、震災復興のための特別法人税を、来年度に1年前倒して廃止し、15年度からの法人実効税率の引き下げにつなげていく方針だという。
ならば、なおさら経済界、企業側の目に見える協力の実績が必要となる。逆に言えば、経済界の明確な協力の予定や実積が示されない限り法人税減税はないということだ。
報道によると、20日の首相と甘利明経済再生相、麻生太郎財務相の三者会談で、甘利氏は「税負担が減った分をどこに使ったか、企業に発表させる方法を考えたい」と提案した(22日朝日新聞)という。