新製品が株価を支えている。

 住友電気工業が7月29日に発表した2009年4−6月決算(2010年度第1四半期)によると、主力の自動車用配線や電機業界向け製品が不振で103億円の最終赤字になった。にもかかわらず、7月中旬以降、1000円を割っていた株価が上昇を始め、8月になると1200円台と2割もアップ、堅調な大型株として異彩を放っているのだ。

 株価を支えたのは7月16日に発表したニュース。世界中で開発競争がなされていた緑色半導体レーザの開発に同社が成功したというものだった。緑色レーザはそれまでも存在していたが、実際は他色のレーザの波長を変換して作り出した「まがいもの」。そのため部品点数は多く、小型・低価格化への制約となり用途は限定的だった。

 新製品はこれと違って純緑色を直接発信。すでに実現している赤色、青色の半導体レーザと合わせることで、光の三原色が揃い、自由自在に色を操ることが可能になる画期的開発なのだ。

 小型・低価格化が実現することで、当面はレーザテレビや携帯型レーザプロジェクターなどの光源への利用が見込まれているが、これは意外と大きな市場だ。

 たとえば、激しい多機能化競争を展開する携帯機器では、プロジェクター機能を搭載する動きがあるが、この装置だけでも16年には年間1億7000万台の市場が見込まれている(テクノ・システム・リサーチ社の08年調査)。

 ある個人投資家は「技術は理解できないが、(光の三原色が揃った)青色LEDの開発で、LED市場が大化けしたイメージと重なる」と期待をふくらませる。

 住友電工は新たな用途にも期待を寄せるが、現在はあくまでも開発を発表した段階で、市場の過熱感に戸惑い気味でもある。今後はどう収益に結び付けるかが問われそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木 豪)

週刊ダイヤモンド